戦争に人生を狂わせた夫婦の悲劇
■作品名ひまわり (70)
■監督
ビットリオ・デ・シーカ
■主演
ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ
■DVD発売元
エスピーオー
■Blu-ray発売元
角川書店
この映画は、イタリア、ナポリを舞台に、第二次世界大戦によって引き裂かれた一組の夫婦の悲劇を描いています。
ビットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニという名トリオは、この映画の前に『昨日・今日・明日』(63)、『あゝ結婚』(64)という艶笑コメディの傑作を生み出しました。
この映画も、前半はマストロヤンニとローレンが演じる夫婦のやり取りが明るくコミカルに展開され、お得意のパターンかと思わせます。
ところが、夫がロシア戦線に出征し、行方不明となる後半は一転して悲劇となります。
この喜劇から悲劇への変転が悲しみを倍加させます。
デ・シーカ監督は『靴みがき』(46)『自転車泥棒』(48)などでイタリアンネオリアリズムの先駆者として知られますが、その一方、コメディ映画も数多く手掛けた人。
だからこそこうした芸当ができるのです。
妻は夫を捜しにロシアに赴きますが、一時記憶喪失となった夫は、命を救ってくれた女性(リュドミラ・サベリエーワ)と一緒に暮らし、子まで生した仲になっていました。
この女性がとてもいい人なんです。
だからこそ夫を返してとは言えない妻。
3人の関係を見ているとなんとも切なくなります。
絶望した妻はひまわりが咲き乱れる畑をさまよいます。
その時、ヘンリー・マンシーニ作曲のテーマ曲がまさに絶妙のタイミングで流れはじめて……。
ずるいと思いながらも涙せずにはいられない名シーンです。
そして夫もたまらなくなって妻に会うためにイタリアに帰国するのですが……。
ローレンがイタリア女性の情の深さとたくましさを体現して見事です。
彼らの誰一人も悪くない。
悪いのは彼らの人生を狂わせた戦争なのだということを強烈に感じさせる恋愛メロドラマの傑作です。