欧州コンパクトカーにあって国産車にないもの
6月1日から発売された3代目パンダは、パッと見こそ先代と大きく変わっていないように思えるが、日本向けは0.9Lの2気筒ツインターボの「ツインエア」エンジンのみで、価格は208万円のモノグレード展開。
「シティエマージェンシーブレーキ」までも標準装備したフォルクスワーゲンup!の4ドアの169万円~186万円(2ドアは149万円~)と比べると割高感があるのは拭えないが、パンダはイタリア車らしさを感じさせる仕上がりで、ドイツ代表的存在であるup!とは違った魅力にあふれている。
この2台に乗ってみて改めて思ったのは、日本製コンパクトカーの生育の悪さが際立ってしまっていること。新車が登場するたびに開発陣に「こんなに進化している」と説明されてもあまり実感できないのだ。
軽自動車が4割占めている最近の日本車市場。「鶏と卵」の話ではないが、税制の恩恵もあって売れる軽に各社が力を注ぎ、そこそこ魅力的な軽が生まれている側面と、どこかのスーパーではないが、まずは「価格安く」に注力し、つぎに「燃費がよければいい」という風潮になってしまい、コンパクトカーが売れなくなるというサイクルにはまっているのではないだろうか。
割り切るところは思い切り割り切る
今回取り上げる欧州コンパクトカーの代表的存在であるフィアット・パンダとVW up!は、日本的コンパクトカー、もしくは軽自動車から考えればツッコミどころ満載だ。
たとえば、パンダのリヤウインドウはいまどき手でクルクルと回して開閉する手動式だし、up!のリヤウインドウは上下の開閉ができず、少しだけ横に開くポップアップ式で、通気くらいしか役に立たない。
さらに、up!の助手席側サイドウインドウの開閉スイッチは助手席ドアにしかなく、運転席側にはない。私も実際に遭遇したのだが、少し窓を開けて走っていると急な雨に見舞われて、慌てて停車してから腕を精一杯伸ばして窓を閉めたことがある。
しかし、こんなことは「走る、曲がる、止まる」というクルマの基本性能を考えると些末なことでしかなく、パンダとup!にはいまの日本車にはない、あるいは忘れてしまったのか本質的な魅力にあふれている。
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