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豪ドル債ファンドの資金流出が止まらない理由

投資信託だけでなくFXでも人気を集めていた豪ドル。その豪ドル関連の金融商品に逆風が吹いています。純資産額の大きい毎月分配型ファンドは資金流出が止まらず、FXでも豪ドル/円の取引がかつての勢いを失っているようです。その背景を探ってみましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

お金の悩みに答えるマネープランクリニックガイド

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豪ドル債ファンドの純資産総額は軒並み減少

オーストラリア政府は、観光産業などに有利な豪ドル安を容認しているといわれている

オーストラリア政府は、観光産業などに有利な豪ドル安を容認しているといわれている

先進国の中では政策金利が高く、国の信用力でも数少ないトリプルA(AAA)を維持しているオーストラリア。投資信託においても、好成績を背景に多くの投資家から資金を集めてきました。しかし2012年後半以降、純資産総額の減少に歯止めがかからない投資信託があります。

一時期、純資産総額1位の座を「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」から奪うような勢いがあった「短期豪ドル債オープン(毎月分配型)」(大和住銀投信投資顧問)。2012年9月決算期に毎月の分配金を1万口あたり100円から70円に減額した以降、投資家離れが加速したようで、純資産総額は2012年8月末の1兆1414億円から2013年7月9日現在の7650億円へ3764億円も減少してしまいました。純資産総額のランキングも2位から7位へ順位を落としています。

2012年8月末に純資産総額3位だった「ハイ・グレード・オセアニア・ボンド・オープン(毎月分配型)」(大和証券投信投資顧問)も、同期間に純資産総額を2470億円減らし、ランキングは3位から8位に順位を落としています。同投信は、2012年10月決算期に毎月の分配金を1万口あたり70円から50円に減額した後、2013年2月決算期に早くも分配金を60円へ戻したにもかかわらずです。

話を「短期豪ドル債オープン(毎月分配型)」に戻すと、2013年6月末基準のマンスリーレポートによれば、騰落率は1カ月-7.0%、3カ月-6.3%とマイナスですが、6カ月2.9%、1年18.3%、3年37.0%。運用成績が驚くほど悪いというわけではありません。

豪ドル債ファンドの人気急落の理由は豪ドル安

豪ドル債ファンドの純資産総額の減少が続いているのは、豪ドル相場の先安懸念が拭えないことにありそうです。オーストラリアの経済成長がスローダウンしていることに加え、政策金利の引き下げ観測がその理由と考えられます。

経済成長がスローダウンしている原因は、中国経済の成長鈍化により資源の輸出にブレーキがかかっていることが大きいようです。2013年1~3月の実質経済成長率は前年同期比2.5%と、前の期の3.2%成長から鈍化して、2013年通年では2%に減速されているとの見方も出始めています。

経済成長がスローダウンしていることから、オーストラリア政府は輸出産業や観光産業に有利となる自国通貨安を容認しているともいわれ、同国の中央銀行は、2.75%と過去最低水準まで低下している政策金利をさらに引き下げることも匂わせています。

さらに、豪ドルが安くなると、「ミセス・ワタナベ」と称される日本の個人投資家の逆張り的な豪ドル買いが影を潜めていることも、豪ドル安が止まらない原因といわれています。

利益確定の売りが続く豪ドル債券ファンド

豪ドル安/円高などにより基準価額が下落していることから、個人投資家が利益確定の売りを行い、さらなる豪ドル安につながっていると推測されます。

前述の「短期豪ドル債オープン(毎月分配型)」の場合、3カ月以内の騰落率こそマイナスであるものの、6カ月以上の騰落率がプラスであることから、保有期間が6カ月以上である投資家の損益は、大多数がプラスだと考えられます。

損益がプラスである投資家が、損益がマイナスにならないうちに利益を確定させようと動いている結果が、「短期豪ドル債オープン(毎月分配型)」を含む豪ドル債ファンド全般に見られるのでしょう。

利益確定は悪いことではありませんが、結果として豪ドル安を招き、さらなる基準価額の低下、利益確定を急ぐ、というスパイラル的な動きにつながります。これらが豪ドル債ファンドの資金流出につながっているのだと考えられます。

政策金利の引き下げに打ち止め観が出される、あるいは中国経済が急回復をするなどの大きな材料が出てこない限りは、豪ドル債ファンドの純資産総額の減少は止まらないかもしれません。豪ドル/円相場を見ていると、値ごろ観が出てきたようにも見えますが、新規の投資には慎重になったほうがよい気がしてなりません。

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