食と健康/旬・季節の食事の食べ方・レシピ

枝豆マイスターに聞く おいしさは時間が勝負(2ページ目)

海外でもヘルシー食材としてブームになったえだまめ。実は、私たちは、えだまめの本当のおいしさを味わっていないのかもしれません。えだまめマイスターの結城拓也さんに、えだまめのおいしさや地域特産物についてお話しを伺いました。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド


消費地に近い近郊農業ならではのおいしさ

えだまめ,苗

これから育てる、えだまめの苗

八尾市は、主に綿花やいちご、若ごぼう、菊菜などが有名な産地でしたが、1960年頃からえだまめ栽培に取り組んできました。今では近畿でナンバー1の生産量を誇っています。

他の産地の多くは、農協に納品し卸しを通すため、遠方から届くものは小売店に並ぶまでに2、3日の時間が確実にかかります。消費地である大阪市に隣接する八尾市のえだまめは、1日で直接小売店にわたりその新鮮さとおいしさが魅力とされています。

とはいえ他の産地と比べると生産量は少ないため、関西でも大手スーパーでどこでも買えるというものではありません。農協等を通さずに直接小売店や、飲食店などに販売されたり、ネット販売に取り組む農家も見られます。

適切な時期に、丁寧な収穫

ゆうき農園,枝豆,エダマメ,えだまめ

八尾市内には、住宅街の合間に小規模の田畑が見られます。

えだまめの収穫時期の判断は難しく、莢の厚みや退色の加減で判断します。きれいな緑の色目を優先させると、実が薄いこともあります。しかし熟しすぎると、硬くなり風味も落ちてしまいます。

消費地が近い地の利を生かし、また八尾の農家はほとんどが小規模経営なので、丁寧な作業ができるため、熟し加減を見極めてぎりぎりまで発育させ、ぷっくりと実が大きくなってから収穫されます。この適切な時期の収穫も、「八尾えだまめ」のおいしさの決め手です。

鮮度がよく、しっかりパンパンに熟したえだまめは、茹でるとあさりが口をあけるように弾ける勢いがあり、甘味もしっかりしているのが特長です。だからこそ買った後も、鮮度がよいうちにおいしく食べてほしいというのが、結城さんを初めとする八尾の生産者の願いなのです。

堆肥作りから、地域農家で研鑽

えだまめ,花,莢,ゆうき農園

白くかわいらしいえだまめの花。花が終われば莢がつきます。

結城さんの農園では、住宅街にある自宅近くに6カ所の畑があり、5月からハウスで種をまいて育て6月に出荷、続いて露地ものへと時差をつけて栽培し、6月から8月までの3ヶ月にわたり出荷されます。

えだまめは、根が浅いので、乾燥を嫌います。今では大豆は大豆畑で作られますが、昔は「畦(あぜ)豆」と呼ばれ、農家と農家の田んぼの境界線となる畦に目印として、大豆や小豆が植えられていました。お米と味噌があれば生きられると、昔の人はよく言っていましたから、最低限度の命をつなぐものを確保するという意味があったのかもしれません。

「水田のすぐ側に植えるということは、乾燥を嫌うえだまめの生態には、理にかなっているんです」と結城さん。ゆうき農園では、6ケ所の畑すべてに井戸を掘り、モーターで水を吸い上げ、パイプを設置しスプリンクラーで散水する設備を設けています。

開発が進む市街地で農業を営む難しさはありますが、場所が限られている小規模農業には、メリットもあります。大量生産で無理な生育をさせれば、おのずと肥料や農薬を使う量も増えがちですが、小規模で自然の営みにそって育てれば、土が良ければむやみに化学農薬や化学肥料を使う必要がありません。また都市部は山間部と比べて虫も少ないので、農薬等の使用量を控えることにも繋がっているそうです。

高品質で安心安全な農産物を作るため、2002年に結城さんを初めとする八尾の若手農家7人が『八尾堆肥研究会』を立ち上げ、お互いに堆肥や栽培法の研究、商品の資材に至まで研鑽し合っています。

同研究会でいろいろと探求した末、現在は兵庫県余川からも牛糞やもみがら、食品廃棄物などを活用したリサイクル堆肥を購入していますが、今後は同研究会で自家堆肥を作りたいと研究を重ねています。

畑を見せていただいて、ガイドは素人ながらも生産コストがかかっていることが伺われ、しかしかといって価格に反映することも難しい現状で、農業を続けていくことの厳しさを、垣間見たように思います。

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