勝新太郎さんの名を世に知らしめた『座頭市物語』
あらすじ
盲目だが、凄腕の壷振りであり居合い抜きの達人でもある座頭市は下総のヤクザ飯岡助五郎親分に食客として迎え入れられる。同じ頃市は剣客にして肺病病みの浪人平手造酒と知り合う。互いの腕を見抜いた二人はやがて酒を酌み交わす仲となる。しかし平手は飯岡のライバル笹川繁造の客分だった。やがて飯岡対笹川の抗争が始まり、運命は市と平手を対決へと導くのだった……。おすすめの理由
この作品は60、70年代を代表するアクションスターの一人である勝新太郎さんのライフワーク「座頭市」シリーズの記念すべき第1作です。座頭市シリーズは映画全26作、テレビシリーズ全100話も製作された人気作品です。座頭市と言えば、勝さんの流麗で目にも止まらぬ速さの殺陣(たて)、己の技量一つで裏の世を渡る孤高なアウトローのイメージが強いですが、62年製作の本作はまだ勝さん自身による演出が見られず、どちらかと言えば古典的な股旅ものの作風で後の作品とは異なる味わいがあります。
ただ本作との運命的な出会いにより、勝さんの才能が開花し、異色の大スターを生む元となった作品という意味で、記念碑的な1本です。興味を持たれた方で映画好きな方は、ぜひシリーズを通してご覧になることをお勧めします。
そして今改めて観直すと、アクション映画として座頭市のオンリーワンの独自性に驚かされます。
一般的な格闘技・武術・剣術・スポーツ由来の動きではないのに、アクションにクオリティの高い独特の間合い・リズム・舞うような踊るような美しさがあります。
また戦いにおける価値観の点でも、アクションヒーローによくある何かや誰かの為の正義・ニヒリズム・宗教的な道徳観とは全く違う諦念的な超越感があって、市固有の不思議な魅力となっています。
今回、後に北野武監督が座頭市をリメイクした理由が何となく分かった気がしました。
あくまで私の読解力で、ではありますが、北野監督も思想の奥に諦念・諦観があるタイプなので、感覚的に勝さんの世界観と相通じるような何か深い共感があったのではないでしょうか?
■作品名 『座頭市物語』
■監督 三隅研次(みすみ けんじ)
■主演 勝新太郎(かつ しんたろう)
■商品データ
・DVD発売 有
・発売元 角川書店