「タビトモ」はジェンダーフリーなガイドブック!?
他のガイドブックについても見て行きましょう。コンパクトに手軽に情報をまとめているのという点では、JTBパブリッシングの「タビトモ」シリーズも面白い存在です。旅の順番に沿った構成で、出発から帰国までを追いかけていますが、このガイドブックの一番優れた点は、もっとも利用頻度の高い地図を表紙の内側にパノラマサイズで掲載している作りではないでしょうか。いちいち中を開いて、地図を見つけたり開いたりする手間が必要ないのは、旅行者にとってはありがたい。同社のララチッタシリーズや「ことりっぷ」シリーズほど「女子女子」していないので、男性にも手に取りやすいはずです。
老舗「るるぶ」と新興の「steady. e-MOOK」にも注目
純粋にいえば「ガイド『ブック』」ではないものの、JTBパブリッシングの「るるぶ」シリーズの存在も見過ごせません。「見る」「食べる」「遊ぶ」「ショッピング」の情報をぎっしりと詰めたムック版のシリーズはもうおなじみですね。好き嫌いは分かれそうですが、このおもちゃ箱のような楽しさは「るるぶ」ならでは。以前はメジャーな旅行地ばかりでしたが、最近はトルコや南アフリカ、ロシア、バルト3国、ペルー等など、旅行客が限られそうなタイトルも増えて来ました。「るるぶ」がいまや立派な「ガイドブック」として機能している証拠です。
ムックといえば、出版業界でいま一番勢いがあるといわれる宝島社が発行している女性ファッション誌「Steady.」から派生したムック「steady.特別編集(e-MOOK)」シリーズも要チェックです。
女子旅に特化した内容ですが、旅の基本情報は省いて、「可愛い」モノと「美味しい」モノ、「楽しめるモノ」に潔く絞り込んだ編集姿勢はあっぱれ。どことなくほんわり、まったり、カメラ女子風の空気が漂う「ことりっぷ」と比べると、こちらの方が女子のノリがより強烈と私は感じましたが、いかがでしょう。
一人旅にフォーカスしたガイドブックも
カップルや友達同士、家族との旅行も楽しいけれど、一人旅の楽しさも捨てがたい。そんな一人旅志向の読者に完全フォーカスしたガイドブックも登場しています。それは、2016年2月にスタートしたJTBパブリッシングの「ソロタビ」。台湾編を皮切りに、ソウル編、ニューヨーク編が刊行されています。
このガイドブックシリーズの一番の特徴であり、もっとも優れている点は、一人旅で不便を感じがちな「食」の場面をクローズアップして、一人でも気兼ねなく利用できる座席がある店や快適に過ごせる時間帯、一人でも頼みやすいボリュームのメニュー紹介に力点を置いているところ
一人で自由に旅する時間は楽しさにあふれていますが、レストランを選び損なうと、一人旅がなんだかわびしく感じられますよね。この「ソロタビ」はそうした気分を感じず、一人旅がより盛り上がる食の店を選んでいるのがうれしいです。
一人旅という切り口では、集英社から2016年に発売された「今日も世界のどこかでひとりっぷ」というムックも斬新でした。海外一人旅歴25年、海外一人旅回数350回を超えるファッション誌編集者が責任編集した女子のための一人旅指南本には、一人旅に役立つ情報やアイデアがてんこ盛り。読んだ後、一人で旅に出かけたくなった読者がたくさんいたのではないでしょうか。
2017年に入ってからは「ひとりっぷ」シリーズはKindle本として「準備編」「香港編」が刊行されてます。ガイドブックの世界を次に活性化するのは「一人旅」というキーワードかもしれません。
このほかにも、とてもここでは語り尽くせないほど異なる個性、異なるキャラのガイドブックがひしめいています。こんな国は日本だけ。この恩恵をとことん享受し、目一杯旅行で活用したいものですね。