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ビザ(査証)とは?パスポートとの違いと種類や申請方法

海外へ赴く際、必要になる書類としてパスポートの次に重要なのがビザ(査証)です。日本人に対してビザを免除している国も多いですが、まだまだ必要になるケースも少なくありません。意外と面倒なこのビザについて基本から解説します。申請書類の書き方や滞在期間と有効期限における注意点など、細かな情報もまとめました。

中原 健一郎

執筆者:中原 健一郎

海外旅行ガイド

目次  

ビザ(査証)とは?

これがビザ(写真はミャンマーのビザ)。パスポートのページにシールやスタンプの形で提供される。

これがビザ(写真はミャンマーのビザ)。パスポートのページにシールやスタンプの形で提供される。

ビザ(日本語では査証)とは簡単に言うと、外国政府からのその国への入国推薦状のようなものです。日本人の入国に対してビザを要求している国の場合、その国へ入国するには東京の大使館へ赴いてビザを申請し、取得しなければ入国できません。

東京にある各国の大使館はビザの申請があると本国に照会してその人物が自国の入国にふさわしいかどうかを審査します。そして晴れてOKが出ると、申請者のパスポートにシールやスタンプの形(例外的に別紙や電子ビザでパスポートには何も押されない場合もあります)でビザが押され、申請者は入国の必要条件の一つを満たすことになります。
 

ビザには種類があります

まず一番重要な注意点として、ビザは入国の目的に応じて適切なものを取得しなければいけません。一般的には観光ビザ、トランジット(通過)ビザ、商用ビザ、就労ビザ、就学・留学ビザ、ワーキングホリデービザ、細かいものになると報道ビザ、宗教活動ビザ、移民ビザなどなど様々なものがあり、国によって当然規定が異なります。

ビザを取得して入国した人は、そのビザの目的に応じた活動しかできません。例えばよくあるケースですが、留学ビザで入国したのに滞在中アルバイトをして賃金を得てしまったりすると、違法行為として(場合によっては国外退去など)かなり重い処罰が下されます。(ただし常識的な話として、商用ビザで入国した人がちょっと地元の観光名所を観光したからといって、おとがめを受けるようなことはありません。)
 

ビザとパスポートの違い

これがアメリカのパスポート。色やデザインは各国それぞれ

これがアメリカのパスポート。色やデザインは各国それぞれ

パスポート(旅券)は国際的な身分証明書であるのに対して、ビザは前述のように被訪問国が発行する入国推薦状です。国家間の移動に際してほぼ必ず必要になるのがパスポートであり、パスポートのみ(ビザは不要)で入国できる場合はあっても、その逆はあり得ません。

もう少しパスポートについて申し上げると、パスポートは身分証明書であるという性格上、本当に密接な関係にある国や地域同士の場合、他の身分証で代用するケースも例外的にあります。ヨーロッパの多くの国民がシェンゲン協定外のフランス海外領土や東欧の国へ行ったりするのにNational Identity Card と呼ばれる日本の運転免許証大の簡易な身分証を使用したり、中国人が通行証と呼ばれる身分証で香港に行ったりするのが該当します。ちなみに、日本人がパスポート以外の身分証で行ける日本国外の場所はありません。
 

特に観光の場合、ビザ免除の国が多くあります

信頼関係にある国同士は、自国民の往来にビザを免除し合うのが通例。

信頼関係にある国同士は、自国民の往来にビザを免除し合うのが通例。

ビザは取得するのに多少の労力を要しますので(発行する方も手間がかかりますし、)国家間の人的交流を減退させてしまいます。そこで例えば日本と台湾、日本とアメリカ、日本とトルコなどなど、相互に信頼関係にある国(及びそれに準ずる地域)同士はお互いにビザを免除し合います。最もベーシックで取得の容易な観光ビザにはじまり、商用などもビザを免除し合うケースが多々あります。

近年訪日外国人観光客がうなぎ上りなのは、観光客誘致のため日本政府が多くの国に対してビザを免除したり要件を緩和したりしたことが大きな要因の一つです。

また日本のような国際的な信頼が非常に高い国の場合、日本国籍者に対して相互ではなく一方的にビザを免除している国も多いため、観光の場合は例外であるはずのビザ免除の国の方が逆に圧倒的に多くなってしまっています。そのため、ビザ取得の方が例外と思っている方も少なくないように感じますが、本来はビザ取得が原則であることは言及に値すると思います。
 

日本のパスポートは世界最強!

このビザ免除がいくつの国から与えられているかによって、各国パスポ―トの通用度を定量的に計ることができます。2018年の調査では日本のパスポートは堂々の世界1位! 今後も順位が大幅に入れ替わることはまずないでしょう。

日本の旅券“最強”に 西日本新聞の記事はこちら

数字も大切ですが、パスポートを提示する折々での“ジャパン”というブランド力とでもいうべき定性的な要素も大事だと思います。その意味でも日本のパスポートというのは本当にすごいなあというのが、いろいろ世界に行ってみての私の実感です。まあ、言ってみれば水戸黄門の印籠のようなものでしょうか。
 

ビザの取得方法 必要書類・日数、料金など

ビザは訪問予定国の大使館に赴いて申請します(例外的に、別のビザ申請所があったり業者を通すことを要する国もあります)。一般的な観光ビザの場合、申請用紙に顔写真を貼って、名前、住所、電話番号、パスポート番号、職業、訪問の目的、滞在先などの必要事項を記入してパスポートと一緒に提出するだけです。少し厳しい所になると、ホテルの予約証明書を求められたりします。しかしその他の業務等ビザになると、各種証明書や健康診断書、場合によっては銀行口座の預金残高証明書など必要書類が増え、審査も厳しくなります。

観光ビザにはシングルビザ(1回のみの入国)に加えてマルチプルビザ(有効期限内なら何回でも入国可)が用意されている国も多いです。自身の旅程に応じて選択しましょう。

料金はもちろん国によって違います。私の相場感で申し上げると、観光シングルなら3000円~4000円程度、マルチプルなら5000円~6000円程度の所が多いでしょうか。必要日数は一般的に2~3日です。

取得に際しての細かな規定は在日各国大使館のホームページに記載がありますので、取得の際は必ずそちらを確認してください。
 

郵送や海外、もちろん領事館でも取得できます

ビザは郵送でも申請できる

ビザは郵送でも申請できる

それでは東京近郊に住んでいない人はどうすれば良いのかというと、申請を郵送で受け付けてくれる大使館がほとんどですので、申請書をホームページからダウンロードして記入し、パスポートと一緒に郵送します。ただし通常申請より当然時間がかかりますので早めの準備が必要です。

また主要国の場合、大阪や名古屋、福岡などの大都市に領事館(大使館の支店のような存在)を設置している場合が多く、こちらへ赴くことでもビザを取得できます。あるいは多くの旅行代理店がビザ取得代行業務を行っていますし、それを専門に行っている業者もありますので、そういった所に依頼するのも一つの手です。

さらに海外に在住の場合や長期の海外旅行中の場合は、海外の大使館、領事館での申請も可能です。日本人だから日本国内で申請しなければいけないということは基本的にはありません。
 

意外と楽しい大使館めぐり!

大使館や領事館は本国の雰囲気を漂わせていることも少なくない。ビザ取得は大使館訪問のチャンス!(写真はイメージです)

大使館や領事館は本国の雰囲気を漂わせていることも少なくない。ビザ取得は大使館訪問のチャンス!(写真はイメージです)

さて、ビザを取得するには東京近郊の大使館などに赴くわけですが、一度の旅行で複数の国を周る場合には、東京の大使館めぐりをすることになります。アメリカやイギリスの大使館のようにでかいビルや宮殿のような大使館もありますし、国によっては郊外の小さな一軒家だったりマンションの一室だったりします。大使館の見た目や大きさ、場所などは、本国のその国に対する影響力の大きさを如実に反映します。

大使館は日本の警察権などの効力が及ばない、いわば国内の外国のような場所です。いずれにしても、どの大使館もお国柄がにじみ出ていて出発前にちょっとした外国めぐりのような雰囲気が楽しめるのは面倒なビザ申請における唯一の救いといったら不謹慎でしょうか(笑)

館内にはビザ申請者を想定していろいろなパンフレットなども用意してあります。いわゆる大国の大使館では事務的な対応以上のものは期待できませんが、例えばアフリカや中南米、オセアニアなどの小さな国の大使館にとっては、日本の若者などが自国に観光に来てくれるというのはうれしいものです。気さくな職員さんならいろいろなお話を直接聞かせてもらえることもありますよ。

実際にはその逆もあり、ビザ代行業者からも評判の悪い南米の某国大使館などは、いかに長蛇の列ができていて手の空いている職員がいようともお構いなし、問い合わせの電話は一切出ないしメールの返事も寄こさないなど、お役所仕事の極めつけのような所もあって、出発前からうんざりさせられるのもお国柄の事前学習と考えるより他ありません。

かく言う海外の日本大使館も、国籍によってはビザの発給に旅行会社や日本人の保証人を必要としたり、その保証人と一緒に写っている写真を提出させたり、発給の可否を「社会的地位等からも総合的に判断」したりと、悪い評判は少なくありませんでした。国策上必要な部分もあるとは思いますが、繰り返しになりますけど、こういうちょっと時代遅れな要件を緩和していったことが訪日観光客の増加につながっています。
 

ビザ申請書類の書き方

申請書の書式は国によって違いますが、一般的な事項の記入例を紹介します。

記入はもちろんローマ字で。小文字は使わず、大文字を用いた方が良いです。ただし中国や台湾なら、住所や国籍などは漢字で書いても構いません。また日付は、世界では日・月・年の順序で書くのが最も一般的です。さらに月は日と混同を避けるため、3文字の英略号で書きましょう。
1月JAN、2月FEB、3月MAR、4月APR、5月MAY、6月JUN、7月JUL、8月AUG、9月SEP、10月OCT、11月NOV、12月DEC となります。
 
  • SURNAME/FAMILY NAME……姓。
  • FIRST NAME/GIVEN NAME ……名。
  • MIDDLE NAME……ミドルネーム。ほとんどの日本人にはありませんので無記入で構いません。
  • SEX……性別。男性なら「MALE」、女性なら「FEMALE」にチェック。
  • DATE OF BIRTH……誕生日。「1,JAN,1917」のように書きます。
  • COUNTRY AND PLACE OF BIRTH……出生国と場所。県と国で十分です。「KANAGAWA, JAPAN」のように書きます。
  • NATIONALITY……国籍。日本人なら「JAPANESE」と書きます。
  • COUNTRY OF RESIDENCE……現在の居住国。
  • OCCUPATION……職業。学生なら「STUDENT」、会社員なら「EMPLOYEE」や内勤の場合「OFFICE WORKER」などと自身の職業を記入します。入国審査官にしても一番突っ込みやすい箇所ですので、口頭で具体的な業務内容を聞かれることも多々あると思っておいてください。
  • MARITAL STATUS……婚姻状況。未婚「SINGLE」、既婚「MARRIED」、離別「DIVORCED」、死別「WIDOWED」などと記入、もしくはチェックします。
  • PASSPORT/TRAVEL DOCUMENT……パスポート情報。
    (a) No.……パスポート番号。
    (b) Date of Issue……パスポート発行日。
    (c) Place of Issue……パスポート発行場所。「KANAGAWA, JAPAN」のように県名と国名を記入してください。
    (d) Issued by……発行者。外務省です。「MINISTRY OF FOREIGN AFFAIRS」と記入します。
    (e) Expiry Date……バスポート有効期限日。
  • PURPOSE OF ENTRY……入国目的。観光なら「SIGHTSEEING」や「HOLIDAY」、商用なら「BUSINESS」などと記入します。
  • LOCAL CONTACT……現地連絡先。宿泊先(通常はホテル)の住所、電話番号を記入します。

最後に必ず、日付と署名を書く欄がありますので、忘れずに記入してください。署名はパスポートと同じものが良いです。ちなみに、パスポートの署名はアルファベットよりも漢字の方が良いと言われています。何かの時に、署名を偽造されにくいからです。
 

アライバルビザとは?

到着空港においてその場で取得できるのがアライバルビザ

到着空港においてその場で取得できるのがアライバルビザ

観光入国にビザを課す国の中には、到着した空港や陸路国境において、その場でビザを発給してくれる国もあります。これをアライバルビザと言い、いくつかの国において実施されています。

確かに便利かもしれませんが、口頭質問でそれなりの審査をする国もある一方で、お金さえ払えばほぼ無条件で事務的にビザを発給している国もあります。これを便利と捉えるか、「単に入国料を取られているだけじゃん」と捉えるかは人それぞれと言えるでしょう。

こういう“名ばかりビザ”は観光収入に依存している国に多いですが、日本で導入された国際観光旅客税のように、“税”と銘打って、使途を明確化してもらった方が払う方もすっきりするような気がします。我々の“ビザ代”が地元の観光資源の維持発展にしっかり役立っていることを祈るばかりですが、一口にビザといっても色々あることも付け加えておきたいと思います。

また現地でそれなりの審査をされる場合、万が一何らかの事由でビザが下りなかったりすると(特に陸路国境は情勢が流動的なので注意)非常に大変なことになりますので、特にある程度の語学力に自信のない人などは、予め日本国内でビザを取得していった方が無難で安心です。
 

滞在期間と有効期限の違いに注意!

ビザは期限を過ぎると失効します。ビザの発給日から何か月間有効とビザに記載してありますので、ビザが切れる前にその国を出国(入国ではありません!)しなくてはいけません。

混同しやすいものとして、滞在期間があります。これは例えば「6か月間の有効期限のうちで、30日間の滞在が可能」という意味で、有効期限とは全く別物ですので注意してください。英語では「VALID UNTIL~」等と表記されているものが有効期限で、「MAXIMUM LENGTH OF STAY」等と表記されているものが滞在期間です。
 

その他注意点まとめ

  • 観光ビザ免除の国の場合でも、滞在可能日数には必ず一定の上限がありますので忘れずにチェックしてください。それを超える期間の滞在を予定している場合は、予め観光ビザの取得が必要になります。
  • ビザがあれば入国できるとは限りません!あくまでも入国可否の最終判断は現地の入国審査官が行います。
  • 出発空港で航空会社職員によってビザの有無は必ずチェックされます。もし適切なビザを所持していない場合、航空機への搭乗を拒否されます(アライバルビザを取得する予定の場合は、その旨を告げてください)。
  • 外国でビザを申請する場合は、その間身分を証明する書類がないということになります。国によっては外国人にパスポートの常時携帯を義務付けている所もありますので注意が必要です。ホテルのチェックインにもパスポートは必要ですので、最低限コピーの所持は必須です。
  • あらゆるビザ情報は非常に流動的です。必ずホームページなどで最新情報を確認するようにしてください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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