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司法書士試験、独学?予備校?―メリットとデメリット

司法書士試験を目指すにあたって、独学と予備校どちらがよいのかということを、双方のメリット・デメリットを中心に考えていきます。

松本 雅典

執筆者:松本 雅典

司法書士試験ガイド

司法書士試験に限らず、資格試験を目指す際にまず選択する必要があることは、「独学」で学習するか「予備校」を利用して学習するかということです。この記事では、「独学」「予備校」のメリット・デメリットを考えていきます。
私は予備校で講師をしていますので、「どうせ『予備校』になるんだろうな…」と思われるかもしれませんが、安易にそのようなことは申し上げませんので、ご安心ください。


司法書士試験の「独学」とは?

本題に入る前に、「独学」を定義しておきます。私が考える独学とは、以下のことを指します。

「予備校で行われる答練や模試などの『演習形式』の講座を除くと、予備校を利用していない」

つまり、答練や模試などの「演習形式」の講座のみ予備校を利用していたとしても、基礎講座や中上級講座などの「講義形式」の講座を受講していない方であれば独学と言います。答練や模試などの演習形式の講座さえ利用していないという意味で「独学」という言葉を使うこともありますが、私は、どんな受験生の方であっても最低限模試だけは受けるべきだと考えていますので、答練や模試などの演習形式の講座は除いています。


「独学」「予備校」のメリット・デメリット

それぞれのメリット・デメリットを、(一般的に言われるものを含め)確認していきます。


独学と予備校のメリット・デメリット

独学と予備校のメリット・デメリット



上の段から順にご説明していきます。


■費用
費用が安いのが独学の最大のメリットです。教材費や数回の模試の費用は必要ですが、1回で合格できれば総支出額5~10万円程度で済ませることも可能です。
予備校の授業料も以前よりは下がっていますが、現在でも、基礎講座や中上級講座などの全科目をカバーした講座で、ある程度のクオリティーを求めるのであれば20~50万円程度の費用がかかります。


■わかりやすさ
予備校の講師の存在意義の1つが、難解な法律をわかりやすく説明することですから、一般的には予備校の講義を聞いたほうが理解しやすくなります。しかし、講師によって当たりハズレがありますので、ハズレの講師の講座を受講してしまった場合は、「わかりやすいテキストで独学したほうがマシだった」ということもあります。
よって、予備校を利用するのであれば、慎重に講師を選ぶ必要があります。決してパンフレット、予備校のホームページ、ネットの口コミだけで決定せず、実際の講義を視聴してから決めてください。今では、ほとんどの予備校がウェブ上で第1回目の講義(またはその一部)を無料で視聴できるようにしています。


■改正の情報収集
法律は、改正されることがあります。それによって、問題の答えが変わることもあります。
法律の考え方自体が大きく変わる大規模な改正は頻繁にはありませんが、細かい改正は頻繁にされます。細かい改正は、試験で出題可能性がほとんどないため対応が不要なものもあれば、試験に必要なものもあります。

予備校の講座を受講していると、改正の情報は予備校が収集し、情報提供がされます。改正に迅速に対応しない予備校は価値がないと判断されてしまいますので、ほとんどの予備校が迅速に対応します。
よって、受講している講座の合格目標年度に必要な改正の情報は、すべて予備校に任せることができます。

独学ですと、自分で改正の情報を収集する必要があります。
法律が改正されると、官報(国が発刊している新聞)に掲載されます。しかし、私など予備校関係者は官報を毎日チェックしていますが、受験生の方がご自身でチェックするのは非効率ですし、非現実的です。
よって、受験生の方が改正の情報を入手するのは、講師のブログや予備校の無料ガイダンスなどになります。ただし、これらで必要な改正の情報をすべて収集できるとは限りませんので、少し不安は残ります。


■勉強法の選択
自由になるかどうかの観点から、独学のメリットとしていますが、デメリットになる場合もあります。予備校を使わないことにより、講師の方法論に合わせる必要がなくなりますが、選択した勉強法が合格できないものである場合もあります。合格できない勉強法のほうが多いです。司法書士試験の合格率に記載しましたが、合格率が3%前後の試験ですので、ほとんどの方が不合格となります。


■計画の自由度
これは、独学の大きな強みです。予備校の講座を利用すると、全科目が終了するのが3月(早くても12月)となります(司法書士試験は7月の第1日曜日に行われます)。また、教材が講座の進行に合わせて配布されることも多いため、一般的には先取りして学習することもできません。
しかし、独学であれば、たとえば、「10月までに全科目を終わらせる」ということも可能です。また、「自分は司法試験の学習経験があるから、憲法・民法・刑法・民事訴訟法の学習は後回しにして、司法試験の科目にない不動産登記法や商業登記法などの科目を先に学習する」などということも柔軟にできます。


■強制力の有無
これは、よく独学のデメリットとして言われます。しかし、私は、強制力の有無は考慮する必要がないと考えています。その理由は、厳しい言い方ですがこれです。

「強制力がなければ学習を続けられないような方であれば、予備校を使っても合格できません」

簡単な試験ではありませんので、「独学で勉強しろ」と言われれば独学で勉強できるくらいでないと合格は厳しいです。


■質問の可否
質問の可否

質問の可否

これは、意外と大きなポイントです。自分で考えてもわからない箇所は、必ず多数出てきます。そこで、質問して即座に回答が返ってくる環境があると、大きなメリットとなります。

これを予備校のメリットとしていますが、ご注意いただきたいことがあります。それは、その講座の「質問体制」です。ライブで受講されるのであれば、どの講座であっても講師に直接質問できるので、大きな問題はありません。
しかし、現在はほとんどの方が通信での受講となりますので、講師に直接質問できるかどうかは講座によります。メールなどで質問できる講座が多いのですが、残念ながら多くの講座が、担当講師が直接返信せず、合格者やスタッフが返信します。講義をしている講師が直接質問に答えなければ、的外れな回答や講義での説明方法と異なる回答になることが多々あり、効果はかなり薄くなります。さらに言えば、ご質問をしてから回答まで1~2週間かかるような講座も多くあり、「質問をしたことさえ忘れていた頃に回答が届いた」ということもあります。

よって、予備校を利用するのであれば、「1.講師が直接回答するのか」「2.回答が届くまでの時間」の2点は事前に必ずチェックしてください。


■受験仲間の有無
これは、予備校のメリットとして挙げていますが、意識の低い受験生の方と知り合いになってもマイナスになるだけですので、デメリットとなることもあります。また、先ほども申し上げましたとおり、現在はほとんどの方が通信での受講ですので、通信ですと独学と同じく受験仲間はできません。


結局、独学と予備校のどちらがよいかは司法書士試験、独学と予備校―結局どっち?に書いています。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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