見える人も見えない人も一緒に楽しめる絵本
目の見える人も見えない人も一緒に絵本を楽しみたいという思いから生まれた絵本があります。目の見える子と見えない子が一緒に楽しめる絵本は、数も少なく、あまり世の中に知られていません。でも、最近ではみんなが一緒に同じ絵本を楽しめるようにと、様々なアイデアを盛り込んだ絵本も、少しずつ増えてきました。今回は、そんな絵本を3冊ご紹介します。■しろくまちゃんのほっとけーき (てんじつき さわるえほん)
ご存知『しろくまちゃんのほっとけーき』が点字付きさわる絵本になりました。『てんじつき さわるえほん』は、本に点字シールを貼るのでなく、本そのものに点字が付いています。しかも、絵本の美しい色はそのままに、絵の上に樹脂インクで盛り上げ印刷をし、点字だけでなく、絵も触って楽しめる特殊絵本なのです。この『しろくまちゃんのほっとけーき てんじつきさわるえほん』は、点字の高さに配慮したり、一部印刷された絵とは違う触図のデザインを採用するなど、あくまでも読みやすさにこだわった絵本作りがなされています。ホットケーキが焼ける匂いが漂ってくるような原作の良さがとてもよく再現されているように思います。
■ちびまるのぼうけん (さわる絵本)
ちびまるという小さな丸い「形」が主人公の絵本です。ちびまるだけでなく、長四角や半丸などの登場人物(?)は、みんな盛り上げ印刷が施されているので、見えても見えなくても同じように図形の面白さを楽しむことができます。また、盛り上げ印刷そのものを上手にデザインに活かしており、アートな絵本が好きな方にも楽しんでいただけそうです。
シンプルな物語の中に、形の認知だけでなく、数の要素も盛り込まれているデンマークの絵本。少々お値段が高いのが難点ですが、芸術性も高く、読む人の年齢を選ばずに長く楽しめるという良さがあります。■これ、なあに? (さわる絵本)
最後にご紹介する1冊は、『ちびまるのぼうけん』と同じデンマークの絵本です。ザラザラくんが、ボツボツちゃんやシマシマくんと一緒に、隆起印刷された道をたどってバラバラくんを探しに行きます。目の見える人も見えない人も、大人も子どもも、時にはギュッと目をつぶり、指でさわって想像を膨らませながら読んでみませんか。それは、絵を見ながらの読み聞かせに優るとも劣らないくらい楽しい経験です。
様々な感触を指先で感じながら楽しむこの作品は、絵本の面白さが読み聞かせだけにあるのではないことを教えてくれます。ボローニャ国際児童図書展エルバ賞やドイツ児童文学賞などの受賞歴があり、国際的にも評価の高い作品です。
目が見える人も見えない人も一緒に楽しめる作品が、絵本の喜びや楽しさを分かち合い、両者の架け橋になることができたら、どれほど素晴らしいことでしょう。そんなことを願いつつ、ご紹介させていただきました。