野望のメスが誤診という殺人を犯す
原作はノンフィクションとフィクションを融合した社会派小説で知られる山崎豊子。本作をはじめ、『華麗なる一族』『不毛地帯』と山崎作品を3作撮った山本薩夫が監督。
貧しく育ち、苦学して大学医学部の助教授になった野心家・財前五郎は教授の椅子を巡り、火花を散らす派閥争いを行っていました。そんな中、教授選に気を取られたために誤診で患者を死なせてしまった五郎。遺族は彼を誤診で訴えます。
そんな最中、医師会のボスである妻の父親・財前又一をバックに、あの手この手を使い教授の椅子を手に入れた五郎。さらに誤診裁判の一審にも勝訴し、五郎は意気揚々と病棟を歩くのでした。
映画化された時点で原作が未完だったこともあり、最終的に悪が勝つというピカレスクロマン映画的な結末となった本作。物語は原作の途中までというものの、まとまりも良く多くの登場人物も非常に整理した見せ方が為され、ストーリーのテンポを最後まで落としません。モノクロの画面も、欲望が渦巻き魑魅魍魎が跋扈するような医師界を重々しく表現していて効果的です。
財前五郎の「五郎」が田宮二郎の本名から取られたのは有名な話ですが、それを裏付けるかのように田宮はギラギラと野心と貫禄を漂わせ活き活きと演じています。
後に映画版とほぼ同じキャストでテレビ版が制作され、物語の完結まで映像化されたのでこちらも必見です。
■白い巨塔
監督:山本薩夫
主演:田宮二郎
DVD発売元:角川書店