フライシャー監督のクオリティの高いエンターテイメント
■作品名ミクロの決死圏
■監督
リチャード・フライシャー
■主演
スティーブン・ボイド
今見ると、古臭かったり時代を感じてしまう部分もあるのですが、このアイデア一発勝負感は、
まさにSFならでは、という映画です。
東西冷戦まっただ中、ソ連とアメリカは物質を縮小させる研究をしていた。
アメリカではどうしても一時間以上、縮小状態を続けることができなかったが、
チェコからその限界を克服できる技術者が亡命してきた。
しかしその技術者は東側からの襲撃を受けて脳内出血を起こし、手術をしようにも難しい状況に。
アメリカの技術者団は、一時間のリミット付きで、彼の体内に縮小した医療チームと潜航艇を送ることを決定する。一時間という限られた時間で、果たして彼らはミッションを成功させることができるのか。
まずはこのアイデアの秀逸さ。しかしこれ、実は手塚治虫のアニメから借りてきたものらしいのです。
ですがまた、そのアイデアを実写映画としてきちんと成立させた技術もまた見事なもので、
特撮技術だけでも、なかなか楽しめます。なんといってもこの時代、まだ電卓すら存在していないのです。
ドラマも面白く作られており、時間との戦いや、潜航艇のクルーの中に潜り込んだスパイなど、
次から次へと事件が起こります。100分少々の映画の中にこれだけ詰め込んで、しかもテンポよく見せる手腕も、さすがフライシャー、といったところでしょう。空港にチェコから技術者が到着してから、罠にはまってのクールでかっこいい襲撃シーン、このカットの割り方、流れなど見事の一言。
あとは、この時代以降、特撮にはセクシー女優が多く登場することになるのですが、この映画では「20世紀最高のグラマー」ラクエル・ウェルチが、身体のラインにピッタリのスーツで、お色気を担当してくれています。セクシー。
クオリティの高いエンターテイメントを、きちんとした職人技と当時最先端の技術でもって描ききったこの作品、やはり名作です。