アベノミクスと不動産市場

現在、政府によりデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた大胆な金融緩和が実施されており、市場には多額の資金が供給されるようになりました。株価の上昇や円安による輸出企業の業績回復が続き、バブルの初期段階のようにも見受けられます。昨年12月の政権交代以降、アベノミクスの効果は日本経済に大きな変化をもたらしています。
景気動向指数

アベノミクスの景気への影響


近い将来、景気へのマイナス要因となりうる消費税の増税も控えていますが、力強い経済政策により景気が回復しているタイミングでの増税となれば、マイナスの影響を打破できる可能性も出てきています。

ただし、景気回復時にはインフレリスクがつきものです。経済の成長とともに賃金が上昇し、物価の上昇分が吸収できれば理想的ですが、物価が上昇したからといって、それに合わせて賃金が上昇するとは限りません。

これは、賃貸住宅経営においても同じことが言え、景気が良くなったとしても、賃料が直ちに上昇するわけではなく、景気の回復が長期化することによって徐々に上昇するのが健全な姿です。

また、不動産価格についても、景気とともに上昇するのが好ましいです。バブル崩壊前の日本は高い経済成長を続けており、不動産は力強い上昇を続けていました。しかし、バブル崩壊後の日本経済は不景気が続き、価格の下落が続いています。建物は経年劣化とともに価格が下落するような状態が続いており、この20年間の不動産市場は、決して健全とは言えない状況が続いていました。

増税前の駆け込み需要による賃貸住宅の供給増加

賃貸住宅の着工戸数の推移

消費税増税の影響も

消費税増税による駆け込み需要の影響は、既に顕著に表れています。平成24年度の貸家は320,891戸となり、前年度比10.7%の増加で、4年ぶりの増加となりました。増加傾向は、来年の4月頃までは続くと見られ、さらに8%から10%への駆け込みも考慮すれば、今後も根強い供給圧力が考えられます。
賃貸住宅の供給は増加が見込まれていますが、日本全体の人口は減少傾向にあります。人・物・金が集まる大都市である東京では、人口はしばらく維持できると言われていますが、需要と供給においては供給が上回っているため、賃料上昇の要因は考えにくいです。

既存物件の大家さんに求められる「ホスピタリティ」の精神

新規に供給される物件は、最新の設備を備え、部屋の広さにも余裕がある優良物件が多く、賃料も若干ではありますが上昇しています。

しかし、新築物件であっても、部屋が広くなった分、面積あたりの賃料単価は下がっていることが多いようです。言うまでも無く、入居者ニーズを捉えていないような既存物件が戦ったとしても、勝ち目がないのは一目瞭然です。競争力のない物件は、高い空室率と賃料下落に苦しむ状況が続くでしょう。

進化し続ける新築物件と歩みを止めてしまった既存物件とでは、格差に歯止めがかかることはなく、今後、二極化はさらに進行することになるでしょう。

そのような環境の中で、築10年を超えた既存物件の大家さんがやるべきことは、まずは「プロパティマネジメント」です。プロパティマネジメントとは、資産の管理を行う業務のことで、入居者さんに対して安定して質の高い管理を提供することが、絶対条件となります。更に、今後の賃貸経営には「テナントリテンション」も大切になってきます。テナントリテンションとは、入居者さんになるべく永く住んでいただくための行為のことです。しっかりとした管理と値打ちの高いサービスを提供することで、空室を出さずに末永く住んで頂くことが、最大の空室対策となるのです。

テナントリテンションを考える上で、最も大切なのは、今住んで頂いている入居者さんを大切しようという気持ちであり、「ホスピタリティ」と呼ばれるおもてなしの精神を持つことです。

ホスピタリティは、ホテル・旅館産業や小売りサービス業界において、ここ数年使われはじめた言葉です。競争の激しい客商売の世界では、お客様の心をつかむために、いかに値打ちの高いサービスを提供するのかが大切になり、これが重要視されています。

当協会も、10年前頃までは、「賃貸経営はサービス業である」と強く啓蒙しておりましたが、借り手市場となった今の時代を生き残るためには、一般的なサービス業から更に一歩進み、ホスピタリティという発想が必要になってきているのです。