ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.1 大山真志

最近、舞台でフレッシュな魅力を放っているあの人は誰? そんな「気になる新星」をガイド・松島が訪ね、お話をうかがうこのコーナー。第一回は『新オオカミ王ロボ』などでスケールの大きな役者ぶりを見せ、期待が集まる大山真志さん(23歳)です。

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

大山真志undefined89年東京生まれ。幼少の頃より数々のアルゴミュージカルに出演。その後ミュージカル『テニスの王子様』『キャバレー』ほか数多くの作品に出演。6月6日開幕の『冒険者たち~The Gamba 9~』が最新作。特技は水泳。小学生時代、北島康介を育てた平井伯昌コーチに「オリンピックを狙えるぞ」と引き留められたが、芝居の道を選んだという逸話も。( C ) Marino Matsushima

大山真志 89年東京生まれ。幼少の頃より数々のアルゴミュージカルに出演。その後ミュージカル『テニスの王子様』『キャバレー』ほか数多くの作品に出演。6月6日開幕の『冒険者たち~The Gamba 9~』が最新作。特技は水泳。小学生時代、北島康介を育てた平井伯昌コーチに「オリンピックを狙えるぞ」と引き留められたが、芝居の道を選んだという逸話も。( C ) Marino Matsushima

昨年末、『女子高生チヨ』でヒロインの気のいい幼馴染を明るく、爽やかに演じ、今年3月の『新オオカミ王ロボ』ではタイトルロールのロボを大きく、たっぷりと演じた大山真志さん。182センチ、水泳で鍛えた体型にヒーロー系の役柄に適した声質という素質面に加え、明快で、スケール感のある芝居。久々の大型新人登場!と思いきや、既に芸歴10年以上のベテラン、しかも「超」のつく売れっ子であることが判明しました。

超多忙でも、ストレスはゼロ

『新オオカミ王ロボ』(2013) ロボ役

『新オオカミ王ロボ』(2013) ロボ役

――『新オオカミ王ロボ』の後も舞台、それも新作舞台が立て続けですね。

「はい、『ロボ』は4月7日まででしたが、4月末からはストレートプレイ『英雄のうた』、5月中旬には劇団TEAM-ODACの『ダルマ』、そして6月6日からはミュージカル『冒険者たち~The Gamba 9~』と続きます」

――舞台は通常、一公演あたり1か月ほど、お稽古をされますよね。本番と次の舞台の稽古を掛け持ちする日も出てくるでしょうし、新作は一から作り上げるわけですから、稽古の密度も半端ではないはず。体力的にも精神的にも、かなりハードなのでは?

「体力的には確かに大変ですが、みんなと『こうしたらもっと面白くなるね』と考えながら作っている時間は、意外とストレスにはならないんですよ。いい経験ばかりさせていただいて、精神的には『もっとできる、もっとやりたい』という感じです。今年厄年なんですが、役者の場合、役が来なくなるというので厄落としをしなかったら、お陰様で役が続々(笑)。嬉しい年になっています」

ジュニアミュージカルでの体験が今の基礎に

アルゴミュージカル『新かぐやの浦島モモタロウ』(2006)

アルゴミュージカル『新かぐやの浦島モモタロウ』(2006)

――プロフィールを拝見しましたら、小椋桂さんが立ち上げた「アルゴミュージカル」に数多く出演されていたとのこと。何歳から出ていたのですか?

「小学校5年から高校生まで、毎年出演していました。小椋さんはいつも顔を出しては『みんなが主役なんだよ』とおっしゃっていました。稽古はとても厳しくて、今から思えば到底子供相手と言う感じではなかったのですが、その時学んだ、『お金を払って時間を割いてきてくださるお客様のために、心をこめて芝居を作る』という舞台に対する姿勢が、今の自分の基礎になっています。家に帰ってから『素敵な舞台だったな、あれはこういう意味だったのかな』なんて思い出していただけるよう、毎公演毎公演、全力を尽くすようにしています」

原点はマイケル、米米クラブ、そしてディズニー

――そもそもミュージカルを目指したきっかけは?

3歳ごろからマイケル・ジャクソンが大好きで、誕生日プレゼントにマイケルのビデオをもらって擦り切れるくらい見たり、5歳ごろからは米米クラブのファンになって、セットや衣裳や一人芝居なんかも手掛けるボーカルの石井さんが凄いなと憧れたり。ディズニーも大好きで、母に年間パスポートを買ってもらって毎日のようにディズニーランドに通っていました。歌もパフォーマンスもダンスもアートも好きというのが総合されて、気が付いたらミュージカルに辿りついていたという感じです」
( C ) Marino Matsushima

( C ) Marino Matsushima

――修業時代、限界を感じたことは?

「あまりなかったですね。負けず嫌いなので、できないことがあってもできるまでやるんです。最初は全然踊れなかったけど、ダンススタジオに行ったら自分よりちっちゃな子たちが上手に踊っているのが悔しくて、毎日稽古に通いました。それも、ジャズダンスだけじゃこの世界じゃ通用しないだろうと思って、ヒップホップ、クラシックバレエ、タップのクラスにも。小学校4、5年の頃のことですが、当時学んだことは今でも使えていますよ」

――ではこれまでのキャリアで、ターニングポイントになった作品は?

「役者として生きて行こう、と思ったのは20歳の頃に主演させていただいた『ソラオの世界』。舞台上の四角柱をエレベーターや船に見立てたりして、お客さんの想像力を刺激してゆくアプローチが僕には新しくて、場の空気を創り出す芝居の楽しさを教えていただきました。もう一つ、先日出演した『英雄のうた』は、さらにレベルの高い役者になろうと思わせてくれた作品です。円形劇場での4人芝居だったのですが、こちらも少し余裕が出てきたのか、お客さんの感情が目線で分かったんですね。自分の芝居によって、お客さんの気持ちを引き寄せたり動かすこともできると思うと、役者って本当に深い、もっといい役者になりたいと思えました」

最新作では「マタドール詩人」を熱演!

『冒険者たち~The Gamba 9~』宣伝ビジュアル。右から二人目がシジン役の大山さん

『冒険者たち~The Gamba 9~』宣伝ビジュアル。右から二人目がシジン役の大山さん

――今は『冒険者たち~The Gamba 9~』の稽古まっさかりですね。原作は児童文学。ネズミたちが力を合わせてイタチと戦うというこの物語は、様々なプロダクションによってミュージカル化されていますが、今回はどんな舞台になりそうでしょうか?

「ちらしを見て、かわいいお話を想像する方もいるかもしれませんが、実際には過酷な部分もある物語です。その中で、仲間同士の絆とか、命の大切さ、人を思いやるということを感じていただける作品ではないかな。とにかく普段から役者同志の絆が大事だと思うので、コミュニケーションにつとめています」

――大山さんが演じるのは、主人公ガンバの仲間の一人、「シジン」。普段は飲んだくれてピントはずれの詩ばかりそらんじているネズミですが、イタチのリーダー、ノロイに渾身の詩をぶつけて対決するという見せ場があるのですね。

「いつもはさえないシジンだけど、このシーンではマタドール風の衣裳に身を包んで、フラメンコ調のメロディに乗せて『すべてを捨てて生きることが戦いなんだ!』と、心の底から出た言葉を歌うんです。ノロイ役は(ベテラン俳優の)今拓哉さんで、今さんと大山真志の対決なら確実に僕は死んでいるんですが(笑)、ここはシジンとして、僕の情熱の全てを注ぎ込んで歌おうと思ってます。僕のソロはフラメンコ調ですが、役によってデヴィッド・ボウイ的だったり70年代ロックだったりとそれぞれキャラクターに併せて曲調が異なるので、音楽的にもかなり楽しめる作品だと思いますよ」

目指すのは、どんな期待にも応えられる役者

――まだ23歳。今後、どんな役者を目指していらっしゃいますか?

「劇団新感線のようなエンターテインメント性溢れる作品にも出たいし、いわゆる王道ミュージカルなら『エリザベート』のトートもやってみたいし、この前『英雄のうた』に出てストレートプレイももっと演じたいと思いましたし……。こんなものも出来るんだね、では、こういうのは出来る?と期待していただけるような役者になりたいです」

――もっともっと羽ばたいていきそうですね。

「そうなりたいです。そうなります!(笑)」

目標は高く掲げつつも、子供の頃に学んだことを忘れず、真摯に一つ一つの舞台に取り組む大山さん。マイケルや米米クラブ、ディズニーに培われた旺盛なクリエイティブ・マインドもあって、現在は新作にひっぱりだこの状態ですが、観客としては名作ミュージカルの大役にもどんどん挑戦してほしいところ。例えば『ライオンキング』のシンバ役など、ぴったりなのでは……? ひそかに、期待しています。 

*公演情報*ミュージカル『冒険者たち~The Gamba 9~』6月6日~16日=サンシャイン劇場 6月22日=名鉄ホール http://www.duncan.co.jp/web/stage/boukensha/

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