風疹の症状と感染リスク・大人にも予防接種が重要な理由
大人の風疹は子どもより症状が重いのが特徴です
風疹は、咳やツバで感染が広がる飛沫感染です。風疹の症状は、発熱や発疹、リンパ節の腫れですが、発疹の出てくる2~3日前から、発疹が出た後5日間の計1週間にわたって、感染力があります。症状の無い時でも感染力があるということは、知らないうちに周りに感染させてしまうということです。発疹が出た時には、既に周りの人にウイルスを感染させている可能性があります。
大人が風疹にかかると、子供より症状が強い傾向があります。高熱が続き、関節の痛みも伴います。さらに、妊婦さんが妊娠初期に風疹にかかると、生まれてくる赤ちゃんが「先天性風疹症候群(CRS)」になる可能性があります。CRSの赤ちゃんにみられる主な症状は、難聴や心臓の奇形、白内障、精神発達障害などです。残念なことに、風疹や先天性風疹症候群にかかってしまうと、特効薬がありません。
風疹は風疹に対する免疫力がない人に次々と感染し、拡がっていきます。感染を防ぐには風疹ワクチンの接種が大切なのです。「風疹の症状・治療・予防・合併症」「先天性風疹症候群の原因・症状・予防」でも詳しく解説していますので、ご確認ください。
<目次>
風疹ワクチン・MRワクチンで予防接種を受けるべき人
風疹ワクチン・MRワクチンの効果と副作用
2006年4月から、風疹ワクチンは生後12~24か月未満と、5歳以上から7歳未満まで、定期接種として2回行われています。そのため今後風疹は減っていくと考えられますが、現在流行している風疹は、ワクチンが1回または不明、未接種の人の間で拡がっています。
未接種でかかる可能性のある人を減らすために、平成20年(2008年)4月から平成25年(2013年)3月31日まで5年間に限って、第3期として中学1年生、第4期として高校3年生に、定期接種することになっていましたが、現在はこの定期接種が終了しています。
今、風疹ワクチンを受けた方がいいのは
- 妊娠可能な女性
- その夫またはパートナー
2013年に風疹が流行しました。風疹に罹った人の多くは大人で、男性が女性の3倍以上。当時は、男性は30歳代に最も多く、20歳代から40歳代では約80%を占めていました。女性では20歳代が最も多い状態でした。つまり、子どもをもつ可能性のある世代で風疹が流行していたことになります。これには風疹ワクチン接種をしたか、回数が関与しています。
昭和54年4月1日以前生まれの男性は、風疹ワクチンの定期接種がなかったため、風疹に対する免疫力がないまたは弱いと推定されています。このことも、流行になかなか歯止めがかからない原因でもあります。そのため、平成31(2019)~令和3(2021)年度までの3年間に限って、第5期の定期接種になっております。これは、以前、定期接種になっていなかった世代(1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までに生まれた男性)に対して、無料で風疹抗体検査を行い、抗体価が低かった人に対して、MRワクチンを行うことです。この世代では自然に風疹に罹ってしまっている可能性があることと、効率よくワクチンを行うことで、対象を限定したとされています。ぜひ、対象者はこの時期に検査してワクチンをしていただいた方はよいでしょう。
少し専門的な話になりますが、まずは風疹に対する免疫力を見ておくことが重要かもしれません。血液検査で、風疹に対する抗体というタンパク質を測定します。抗体は、HIという方法で16倍以下、EIA法という方法で8.0未満であれば、ワクチン接種が勧められます。
また、風疹にかかったことがない、かかったか判らない、ワクチンを受けていない、受けた記憶が無いといった場合、上記のような血液検査をするのも良いですが、ワクチンが1回の場合は免疫力が不十分な場合があるため、免疫力の強化のために再度ワクチンを接種しても良いかと思います。
風疹ワクチン・MRワクチンの費用・副作用
成人のワクチンは1回で、十分な免疫力が期待できます。風疹だけを予防するなら風疹ワクチン、麻疹も予防するなら「MRワクチン」です。現在、残念ながら、大人の風疹ワクチン、MRワクチンは自費になっています。一部の自治体では補助を出していることもあるので、住んでいる自治体に問い合わせてみましょう。風疹ワクチンは5000円前後、MRワクチンは8000円前後の費用になります。ただし、上記の通り、平成31(2019)~令和3(2021)年度までの3年間は大人でもワクチン接種が公費で行われます。
MRワクチンについては「MRワクチン(麻疹・風疹)の接種・時期・副作用」を参考にしてください。
ワクチン接種後は、2カ月間、避妊が勧められています。接種後に妊娠が判明しても、風疹ワクチンによる先天性風疹症候群の報告は現時点ではありません。そのため、中絶は不要ということになっています。
風疹ワクチンの副作用は、接種後5~14日後に発熱が約2%、発疹が約1%程度。また、大人では関節痛の副作用が出やすいのですが、1週間以内に治ります。
予防接種は危険? 安全? ワクチンの有用性
ワクチンがあるのは、非常に有り難いことだと言えます。ワクチンの開発には、大きな努力と長い時間が必要です。特に、生ワクチンについてはウイルスをそのまま使用すると、病気になってしまうため、病気にならないようウイルスを培養細胞で何代にもわたって育てていきます。ワクチンは、育てている中で遺伝子変異により出現した弱毒のウイルスを使って作られるのですが、ウイルスはすぐに弱毒ウイルスになる場合もあれば、何年かかっても弱毒ウイルスにならない場合もあるのです。
一方で、不活化ワクチンはウイルスの一部を使用するため、生ワクチンより早く作ることができます。しかし、効果が一時的であったり、思った効果が得られない場合もあります。
風疹ワクチンは上記のように開発され、弱毒ウイルスは保存、製造されます。もしも、風疹ワクチンがなければ、風疹は誰もが一度はかかる病気になり、かかる時期によっては、赤ちゃんに影響を及ぼしたり、合併症により脳炎や血小板の下がる重大な病気にもなってしまう恐れもあります。それらにより後遺症が残ってしまうことや命に関わってしまうこともあるのです。
風疹にかかってしまった場合のリスクの大きさを考えると、やはり大人もしっかりとワクチンをしておいた方がよいと言えるでしょう。
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