家具を楽しむ余地、囲われる安心感
近年の超高層化は、マンション設計に多大な影響をもたらした。その最たるが、眺望価値の最大化である。集合住宅ならではの特長のひとつ「眺めの良さ」を引き立たせる試みが急速に普及。窓を広げ、柱梁を抑え、バルコニーにもクリアな建材を用いる。景色そのものがインテリアの一部、ダイナミックなビューこそがマンションライフの醍醐味である、とでも言うように。ところがどうだろう、極端に壁を減らされた住まいは(見える景色は素晴らしいかもしれないが)、例えば家具の置き場を失ってしまった。インテリアグリーンやフォトスタンドを飾るためのシェルフはどこに置けばいい? それ以前に全面開口は「あらわ」な印象を与えかねない。明る過ぎる住まいというのもいかがなものか。一定のプライバシーを保ち、人が寛ぐためには適度な仕切りや陰影が必要なのかもしれない。
右上の画像にご注目いただきたい。ダイニングの向こう側の横長の窓は、立ちあがったときの視界は抜けるが、食事中は気にならない高さ。その下部は、ディスプレイ用のテーブルを置くスペースに最適のようだ(実際のコーディネートもその通りに)。人の目線や現実の暮らしを意識しない限り、こういう開口部にはならないだろう。同様のことはキッチン(上の大きな画像)でもいえる。
バルコニーのプランターもグリーンの落ち着きとともに、適度な囲われ感をもたらしていることに気付く。開放性を失わないよう、スリットを設けた上で。相反する条件を微妙なバランスで均衡させている。下のベッドルームの画像では、その言わんとするところがお分かりいただけると思う。
建物の基盤となる構造の話も加えておこう。「六本木ヒルズ」では、CFT造という鋼管内部にコンクリートを充填する工法を採用。これは、耐震強度の向上を図りながらも、太くなりがちな超高層の柱梁を抑えることで空間の快適性を上げる効果も期待できる。B、C棟にはさらに粘性体を用いた制震構造も取り入れ、より安心安全なタワーライフを追求した。
心地よさを醸成する細やかな仕掛け
最後にバルコニーについて、もう少し記述しておこう。「六本木ヒルズレジデンス」では、まさにバルコニーがひとつのアクセントになっている。まず驚かされることは、その数の多さ。外観デザインを意識しながらも、室内から見た空間の広がりや、行き過ぎない開放感を微妙に調整しているのが、ほかでもないこのバルコニーである。機能性にも配慮が行き届く。リビング床面との一体感をもたらすウッドデッキ、自動水栓付きのプランター、また構造上やむを得ない場所を占拠する柱は円形とし、柔らかさを印象づけている。水栓のフォルムやライムストーンに発見できるアンモナイトも微笑ましく、見る者の緊張を解きほぐしてくれるようだ。
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