2億円の決断をするための学生が出来る手助けとは?
面接は自分本位にならずに、企業との協働作業の場として臨んでほしい
一言で言うと「不安でたまらない」のだ。
目の前の学生がきちんと会社に馴染んでくれるか、地味で退屈な仕事を任せてもやめずに頑張って続けてくれるか、内定を出したとしても、他の有名企業に行ってしまわないか、などその後を考えると不安でたまらないのだ。
そんな不安な気持ちの中で2億円の決断をするのだから、誰かに相談したくなるのも当然だ。だから私のような「採用コンサルタント」が企業には必要になる。
しかしそんな採用コンサルタントなどいなくとも、学生自身が企業の気持ちを理解し、自分自身の力でその不安を払しょくするような意識を持って行動してくれたら、それは最高の「決断の手助け」となる。
学生はよく面接の準備として企業研究をしっかりとやり、その企業の魅力や企業への想いを最終面接でぶつけることが多い。それそれで確かに企業側にとってはうれしいのだが、それだけでは「不安」は払しょくできない。
やはり企業側がたくさん発信している「魅力」や「働くメリット」だけでなく、本当は発信したいのだけどなかなかできない、でもわかっておいて欲しいこともキャッチした上で、「私は御社に入社しても大丈夫ですよ」という想いを伝えて欲しい。
最終面接前の現場社員インタビューで不安要素を収集
社員からは日々どんな苦労を乗り越えているかを聞いてほしい
しかしポイントは2つあって、1つはインタビューするのは企業の採用活動に関わる「リクルーター」ではなく、現場で働いている「普通の社員」である点。そしてもう1つは聞く内容は「何がこの仕事で、この会社で最も大変か」ということと、「それでもやめずに頑張れるのはなぜか?」という点。前者の質問は必須、後者は聞けたらで良い。
なぜ「リクルーター」ではない、現場の「普通の社員」であるのか。本来リクルーターも現場で働く社員なのではあるが、採用活動のために選抜された社員であり、企業をPRする役割を担っている。そのため質問の1つ目である「大変なこと」よりも「仕事のやりがいや魅力」が優先的に出てきやすい。
私自身も毎年リクルーター研修といって、大手企業の現場社員を集め、どのように会社や仕事の魅力をアピールすれば効果的かという研修を行っているのでよくわかる。現場社員であれば、率直な生の声が聞きやすいため、出来れば現場の社員と会えたらよい。
そしてなぜ「大変なこと」を優先して聞くかというと、どんなイメージの良い仕事も、人気企業での仕事も、仕事は必ず一度はやめたくなるほど大変だからだ。でもなかなか企業の採用担当者はその仕事の辛さ、大変さを学生とのコミュニケーションでは強調出来ない。強調し過ぎると他社に逃げられてしまうリスクがあるからだ。すると学生も仕事のやりがいや魅力を中心に受けとってしまう。
でも最終面接では、面接官の気持ちとしては「この学生はうちのあの大変な仕事に耐えられるかな~」、「うちの会社は他社と比べると休日が少ないけど、入社後にそれを知ってもやめずに頑張ってくれるかな~」という不安がある。
その不安に対して自分で情報収集した現場の生の声を伝え、
「社員の方はやはり休日が少ないということが大変だとおっしゃっていました。私も正直、今まで土日休みが当たり前の生活をしていた分正直不安があります。でもその働いた分の成果がしっかりと評価される制度があると聞いて、今は土日でも頑張って働いてみようという気持ちになれています」
と自分から面接官の不安を払しょくするということも出来る。
現場訪問をして、社員インタビューした内容を最終面接で伝えれば内定が取れるというわけでは決してない。
しかし、最終面接という場を「内定へのあと一歩の場」という自分本位の視点から、「企業と学生がお互いに安心して決断するための協働作業の場」という相手視点の感覚になれると、必然的に最終面接の臨み方が変わり、それに伴って結果もついてくるはずであろう。
ぜひ企業と共により良い決断が出来るためのコミュニケーションをしてもらいたい。