年金/遺族年金の仕組み

社長夫人は、社長が亡くなった後の遺族年金に注意!(2ページ目)

先日、60代半ばとみられる女性が窓口へ相談にいらっしゃいました。突然年金の額が減ってしまって納得がいかないと少しお怒りの様子。この女性はなぜ年金が突然減らされてしまったのでしょうか? そのからくりを探ってみたいと思います。

綱川 揚佐

綱川 揚佐

年金 ガイド

金融機関在職中に1級ファイナンシャルプランニング技能士を取得。その後、社会保険労務士や年金アドバイザーを取得。職業訓練講師を経て、年金記録確認第三者委員会に勤務。退職後、社会保険労務士・FP事務所を開業。法人向けの労働相談、就業規則作成に携わる傍ら、年金相談を受けている。

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今回のケースで年金が減額された理由はこれだ!

65歳までは遺族年金のほうが高く、遺族年金を選択していましたので、給与が高額でも年金を全額受け取っていました。これが、65歳を迎えると前ページで述べた通りのもらい方となりますので、相談者の年金は、老齢基礎年金(約70万円)+老齢厚生年金(約50万円)+遺族厚生年金((約150万円-約60万円+約18万円=約108万円)-約50万円=約58万円)の合計約178万円がベースとなります。 ベースの金額は65歳前より増えていますが、ここで先ほどの在職老齢年金が登場します。

年金の停止額は、今回の場合、次のように計算します。
(給与月額(62万円)+老齢厚生年金月額(約50万円÷12=約4万2000円)-46万円)÷2=10万1000円

計算結果が年金月額を超えてしまっていますね。老齢厚生年金は全額停止です。

老齢厚生年金が全額停止となっても、遺族年金の計算は変わらず約58万円のままです。すると先ほどのベース金額約178万円から、50万円が単純に減って、年額約128万円が受け取り金額となります。

65歳前よりも約22万円、1回あたり約4万円減ったことになります。
減額のからくりイメージ

減額のからくりイメージ

はじめは何かの間違いではないか、と怒っていた相談者も、怒りを収めて帰っていきました。

遺族年金の受け取り方は、少し前の制度改正で現在の形になりました。一般的には「自分で掛けた年金は自分でもらう」との考え方でこの形となっている、と言われていますが、巷ではよく「遺族年金は非課税だが老齢年金は課税対象だから、少しでも税金を取るためにそうしたんだろう」という声もちらほら。ですが、そうした側面のほかにも、このような落とし穴があったのですね。今回の社長夫人のように、遺族年金をもらいながら、高額な給与を受けている方は、要注意といえそうです。

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