フェラーリのV8エンジンを積んだセダン
気づけばこんなに値落ちしていて「おいしい!」という中古車をご紹介しているこの企画。今回はマセラティクワトロポルテ(旧型)をご紹介したいと思います。このモデルの前、旧々型はガンディーニによる直線基調のスタイルでしたが、この旧型はピニンファリーナが手がけました。ピニンファリーナはそれまマセラティのライバルであったフェラーリを担当していたため、同社のデザインから外れていました
登場は2004年5月。以来約9年間マセラティのフラッグシップとしての重責を担ってきた旧型クワトロポルテ。つい先日、今年4月に新型にチェンジしたばかりですから(デリバリーは6月開始)、旧型になりたてです。
新型はマセラティ社が新設計したエンジンが搭載されたのに対し、旧型のエンジンは、提携相手であるフェラーリのF430に搭載されているV8を同車用に仕立て直したものが載せられています。また組み合わされる2ペダルMTも、フェラーリの技術。
つまりフェラーリが、瀕死のマセラティを自社でエンジンが設計できるまでに救ったというわけです。実際この旧型クワトロポルテはヒットし、このクーペ版ともいえるグランツゥーリズモもさらにヒットすることでマセラティの業績は回復していきました。
旧来からのマセラティ好きは新型のほうが気になるでしょうが、旧型は見方を変えると「フェラーリの血が入ったマセラティ」と言うことができます。
独自のスカイフックサスペンションシステムにより、スポーツカー並みのエンジンとミッションを備えながらも、ラグジュアリーセダンにふさわしい優しい乗り心地を乗員に提供してくれます
私はここに注目してしまうのです。フェラーリにはV8のセダンは存在しませんから、この車には希少価値があると思います。その昔、フェラーリのV8エンジンを搭載したランチアテーマ8.32というセダンがありましたが(これもかなりレアですが)、それ以来と言っていいかもしれません。
それが原稿執筆時点で中古車を探してみると、例えば走行距離5万kmで315万円(2004年式/修復歴なし)から見つけられます。新車時は1340万円ですから約1000万円値落ちしているのです。一方、同じV8を積んだF430を見ると、最安値は1050万円(2006年式/走行距離2.2万km/修復歴なし)。
年式や走行距離が異なりますし、そもそもF430は2シーターであることなど本来比較の対象外ですが、それでも旧型クワトロポルテのおいしさはわかるかと思います。
とても1000万円も出して2人しか乗れないスーパースポーツカーを買えない庶民の私ですが、それでもフェラーリに対する憧れだけはあります。それゆえ、2シーターのスーパースポーツカーの半額以下で4人(乗車定員は5人)が乗れる高級スポーツセダンが買えるとなると、俄然おいしく見えてしまうのです。
何ともエロティックな内装を備えたクワトロポルテの心臓(エンジン)にはフェラーリの血が通っていて、やはりフェラーリのF1技術がフィードバックされた2ペダルMTのパドルをパンパンッと操ることのできるセダン、クワトロポルテ。
次ページ以降でさらにその魅力を詳しく見ていきましょう。