「網膜保護のために紫外線カット」は誤り
網膜にダメージを与えるのは可視光線。長時間使うPC画面にも注意が必要
眼科医の中ですら、紫外線と可視光線が混同されているケースがよく見られます。「あなたは網膜が悪いです。網膜を保護するために、紫外線を避けてください」というのは正しくありません。「網膜を保護するために、可視光線を避けてください」というのが正しい言い方です。まぁ通常紫外線が多いところは可視光線も多いので、全くずれているというわけではありませんが……。
紫外線、可視光線、赤外線については、知っておくと目の健康管理のために理解が深まると思います。わかりやすいように、ざっくり説明したいと思います。
多く当たると結膜に悪影響が出る「紫外線」
紫外線は日焼けの電磁波で、目には見えません。日焼けサロンや消毒器の紫外線を発する機械は光って見えるじゃないかという人がいるかもしれませんが、あれは紫外線と一緒に、別の可視光線を発しているために過ぎません。紫外線は網膜にはほとんど影響を与えませんし、私の臨床での経験的に、水晶体に対しても大きな影響はないと考えます。ですが、白目の表面である結膜に多く当たると、翼状片や瞼裂斑、慢性充血の原因となります。基本、紫外線が眼にとって良いことは何もないと考えてよいでしょう。
太陽の光には紫外線がたくさん含まれていますので、これをカットすることが目を綺麗に保つためには大切です。紫外線をカットするためには、レンズに色がついている必要はありません。よくある間違った質問が、「紫外線をカットしたいのですが、どんな色のサングラスがいいですか?」というやつです。みなさんがかけている普通のメガネ、透明でも紫外線カットのものがほとんどだと思います。
網膜までしっかり届いて障害を与える「可視光線(=光)」
可視光線とは、私たちが一般に「光」と呼んでいるもののことです。目に見えるということは、網膜にまでしっかり届いているということです。可視光線にはよく言われる「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」があります。もちろん7種類だけではなく、その中間の色が無限にあるわけなんですが。その中で、青、藍、紫の色が特に網膜に障害を与えます。通常はよほど強いものでない限りは問題ないと考えますが、弱いものでも長時間浴び続けると、網膜には良くないでしょう。
可視光線をカットするには、メガネのレンズに色がついている必要があります。レンズの色によって、カットできる光の種類が変わってくるわけです。
網膜保護に適しているのは、黄色・オレンジ系・茶系のレンズ
患者さんからのよくある質問で、「では網膜を保護するためには、何色のレンズがいいのですか?」というのがあります。極端な話、全色をカットする、すなわち、色に関係なく、ひたすらものすごく暗いレンズが一番良いわけですが、それでは何も見えなくなってしまい話になりません。ですので、見えて、かつ網膜保護効果を期待するためには、網膜に影響を及ぼしやすい青色系を選択的にカットしてくれるレンズを選ぶと良いといいうわけです。
そのため青色系のレンズ(かけると世界が青く見えるようなレンズ)は、青色だけを選択的に通してしまっていることになり、網膜保護効果としては最も適していないレンズということになります(持っている人はごめんなさい)。
逆に、かけると空の青色があまりきれいに見えないレンズ、具体的には、青色系の反対色である、黄色系、オレンジ系、茶色系などのレンズが、網膜保護に適しているといえます。