眼科領域でも多いウイルス性疾患……よくある目の病気もウイルスが原因?

眼科の診療イメージ

眼科診療の場でもウイルスの院内感染対策は極めて重要です


私は横浜で開業している眼科の専門医です。普段1日150人ぐらいの患者さんを自分で診療しており、病院として他の先生の外来もあわせると、1日250人ほどの患者さんに全国から来てもらっています。手術治療を得意としていますが、患者さんからは診断や薬治も評価していただけています。研究がメインの医療者ではありませんが、臨床経験はかなり豊富な方でしょう。

また、呼吸器感染症の専門医ではないものの、私に限らず眼科医はウイルス性疾患に関してかなりのノウハウがあります。多くの方におなじみの目の病気である結膜炎なども、感染性の高いウイルスとの戦いだからです。

今回は眼科医として、「ウイルス」というものの感染力の凄さと、ウイルスから身を守るための感染予防に大切なことをお話ししたいと思います。
 

眼科が院内感染対策に神経をとがらせる理由

眼科では「流行性角結膜炎」「急性出血性結膜炎」「咽頭結膜熱」というウイルス性の結膜炎、俗に言う「はやり目」という病気があります(以下「はやり目」)。「あそこははやり目の院内感染が酷い」といった噂が広まると病院は倒産してしまいますから、眼科医は毎日院内感染を起こさないようにピリピリしています。特に開業医は倒産危機となると死活問題ですから、万一院内感染対策がいいかげんなスタッフがいたりすると、温厚な先生でもめちゃくちゃ怒ったりします。

眼科は待ち時間がやたらと長いくせに、雑誌の一つくらい置けないのか?と思われたことがあるかもしれませんが、これも感染対策上の理由です。自分たちも置けるなら置きたいのですが、ウイルス性結膜炎などが雑誌などを介して広まるリスクを考えると、置くことができないのです。

さらに、はやり目のウイルスは、風邪のウイルス(一般的なコロナウイルス)にそっくりといわれます。実際、はやり目に合併して、のどの痛みや咳、発熱などの風邪症状がみられることも多々ありますからね。

ということで、ウイルス性疾患をいかに広めないかは、常時朝から晩まで考えて対策をしているのです。ここからウイルスの怖さと、感染対策に大切なことをお伝えしたいと思います。
 

「はやり目」で考えるウイルス感染力の凄まじさ

現在新型コロナウイルス感染症が拡大しており、「クラスター」という言葉もよく耳にしていると思います。クラスターの怖さや、クラスターを作らないための対策が重要なことは、皆さん普通に理解されていると思うのですが、ここでは眼科医として、ウイルスによってクラスターが簡単にできてしまう怖さ、ウイルスの感染力の凄まじさについて、ひとつ身近な例を挙げてお話したいと思います。
 
「クラスター」という言葉を、今回のウイルスの拡大で初めて知ったという方も多いかもしれませんが、眼科医が「クラスター」と聞くと、まず頭に浮かぶのは、夏にプールで起こる、はやり目の患者さんの大量発生です。はやり目は先述の通りウイルス性の感染症で、ものすごく感染力が強いのです。はやり目の患者さんが目を触った手で手すりなどに触れてしまった場合、その手すりに触った手で自分の目を触った人たちは、たちどころに感染してしまいます。私も研修医になりたての時、しっかりうつりました……。

特にプールでは、本当にあっという間に感染が広がります。プールでは様々な衛生管理がされていると思いますが、プールに一人、片目だけはやり目の人が入るだけで、同じプール内でものすごくたくさんの人に感染してしまうのです。イメージしてみてください。あの大きなプールに、片目ですよ! どれだけ薄い濃度でうつるねん!?という話ですよね。つい関西弁が出てしまいましたが、それだけ衝撃的なほど、感染力の強いウイルスは身近にいるということです。
 
感染性の高いウイルスは、それがこもるところに拡散されると、非常に薄い濃度でも、かくも凄まじい感染力を発揮します。「一人の片目から、プール全体で集団感染」というクラスターが、毎年あちこちで発生し続けていることを考えれば、ウイルスというものの感染力の凄さがわかるのではないでしょうか。

そう考えると、今クラスター対策で注意されているカラオケやライブハウスなどの狭い空間で、感染者が大声を出したりしたら、それはもう……ということは、容易に想像できるかと思います。
 

感染力が強くても予防法はシンプル! ウイルス対策は基本の徹底が重要

そして忘れてはいけないのは、ウイルスというものはこのように手強い感染性を持つ一方、戦い方はとてもシンプルで、「しっかり対策すれば、感染せずに済む」ということです。

例えば、はやり目のウイルスがもし手についたとしても、すぐに手を洗うとか、普段から手で目を触らないといった基本の感染対策ができていれば、まったくうつりません。当たり前といえば当たり前なのですが、毎日複数のはやり目の患者さんを診察している眼科医やスタッフが、感染力の強いはずのはやり目にならないのは、そのシンプルな対策を徹底して実践できているからです。

眼科医が考える新型コロナウイルス対策」記事でも詳しく解説しましたが、ウイルスの感染予防は、目の病気を起こすウイルスであれば目、そして内科的な病気を起こすウイルスであれば、とにかく鼻や喉に入れない方法を考え、実行することが重要です。手洗いの徹底や、顔を触らないようにすることなど、王道ともいえる基本の予防法を徹底しましょう。そして感染拡大期の今は、STAY HOMEと繰り返されている通り、とにかくウイルスと接触するリスク自体を、個々人が可能な限り下げることが一番です。

もちろん個人が頑張っても、完全な100%とはいかないこともあるかもしれません。それでも公式通りにやれば、「感染力の強いウイルスでも、かなりいい感じで予防できるのだ」ということをしっかり頭に入れて、感染対策を頑張っていただければと思います。
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