目の病気/結膜炎・ものもらい(麦粒腫・霰粒腫)

ものもらいの原因・メカニズム

まぶたの腫れが特徴的な症状のものもらい。何が原因で腫れや痛みが起きるのか、ものもらいの原因とメカニズムをわかりやすく解説します。

大高 功

執筆者:大高 功

眼科医 / 目の病気ガイド

霰粒腫(さんりゅうしゅ)の原因、メカニズム

まぶたの腫れはものもらいの共通症状。痛みや違和感の他、見た目的にも本人には気になる症状です

痛みを感じないこともありますが、まぶたの腫れはものもらいの共通症状。

まず、「マイボーム腺」という言葉をご理解ください。マイボーム腺とは、上下のまぶたの最先端に口を開いていて、目の表面に油を出しているところです。まぶたの中に縦にたくさん並んでいます。鏡でよく見れば、まぶたのふちに点々とマイボーム腺開口部が並んでいるのがわかります。開口部に油が半球状になっているのが見える場合もあります。このマイボーム腺からの油と涙腺からの涙液のおかげで、目の表面がツルツルテカテカに保たれています。


霰粒腫とは、マイボーム腺が特に理由もなく詰まって、中に油がたまってしまうのが原因。その油がマイボーム腺を中からガンガン押すために炎症が起こり、体に炎症が起こったときにできる肉芽(にくげ)というものが油と一緒に溜まった状態です。マイボーム腺はもともと細い管なので、特に原因がなくてもつまってしまうことがあるのです。吹き出物が原因もなく突然できるのと同じです。

初期ではまぶたが腫れているだけで、痛みは多少感じるときもあればほとんど感じないときもあります。もう少し時間がたつと、ころころとした玉がまぶたの中にできるのが特徴です。

化膿性霰粒腫の原因、メカニズム

上記のの霰粒腫ができる過程で、マイボーム腺がつまって、その中で菌も一緒に増えてしまって感染が起こるのが「化膿性霰粒腫」です。通常の霰粒腫よりも腫れがひどく、赤みが強く、痛みが強いのが特徴です。切開してみると、白いどろっとした油と、やや緑っぽい膿と、白くてぷよぷよした肉芽が一緒に見られます。

ただの霰粒腫と化膿性霰粒腫は区別がつくのでしょうか? 残念ながら症状から厳密に区別をつける方法がありません。中で感染が一緒に起こっているかどうかは中身をとって培養して調べないかぎりわかりようがないからです。感染、すなわち菌が激しく増えた状態になってはいなくとも、もともと菌はいると思われるので、培養してもわからないかもしれません。我々臨床医は、実は感染が起こっているかどうかは症状を見て勘で判断しているに過ぎないというわけです。ですが、赤み、痛みが強いときはやはり感染が起こって、化膿していると考えて間違いないと考えます。

麦粒腫の原因、メカニズム

麦粒腫とはなんでしょうか。日本眼科学会のホームページには次のように書かれています。「麦粒腫とは俗に『ものもらい』と呼ばれている病気で、原因は細菌感染によるものです。汗を出す腺や、まつげの毛根に感染した場合を外麦粒腫、マイボーム腺の感染を内麦粒腫と呼びます」。私はこの定義について、外麦粒腫に関してはまさしくそのとおりだと思いますが、内麦粒腫については多少の疑問を感じます。

マイボーム腺には、毛穴などと同様、普段からたくさんの菌が生息しているものと考えられています。人間の体の小さい穴には菌が生息しているのが普通です。その菌が特に理由もなく急に膿がたまるぐらいに増えてくることは通常考えづらいです。たとえば髪を洗えない日はベタつきを感じるように、人間の頭にも油を出す腺がたくさんあります。面積から言って、おそらく目とは比較にならないぐらいたくさんあるでしょう。その腺が突然激しい感染を起こして腫れあがったなんて聞いたことがないです。もちろんありえないことではないのでしょうが、通常はないと考えられます。

また、マイボーム腺からは常に大量の油が排出されているのに、異常に増えた細菌や膿がマイボーム腺開口部から油と一緒に排出されないのはなぜだろうという疑問も生じます。

なぜマイボーム腺に菌が増えたのでしょうか? それはマイボーム腺の油がなんらかの理由で流れが悪くなって、マイボーム腺が詰まることが原因。中の菌が外に出られず、どんどん増えて溜まってしまうためと考えられます。この際、当然外に出られなくなった油も中に溜まるでしょうから、内麦粒腫と定義されているものは、実は「化膿性霰粒腫」そのものではないかとも考えています。

私は以上述べたような根拠で、私は、眼科学会のホームページにおいて外麦粒腫と定義されているものが麦粒腫であり、内麦粒腫と定義されているものは化膿性霰粒腫であるのではないかと考えます。

しかし、繰り返しになりますが、日本眼科学会のホームページに書いてあることが正しいか私の考えが正しいかを追求することは全く意味のないことです。というのは、正式な病名と言われるもの自体も誰かが患者さんのとある状態を見て勝手につけたものであり、すべて元来あいまいなものだからです。どちら正しくても、菌をたたくという治療方針には変わりはないので、臨床的には何の問題もありません。
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