翼状片

白目部分のテノン嚢が異常に増殖し、黒目部分の角膜に向かって広がってしまう翼状片

私は翼状片の手術を年間400例程度やっています(1週間に少ない週で6人、多い週で17人ぐらい)。私は純粋な臨床医であって研究者ではないので、翼状片の生理などに関しては自分で研究はしていませんが、自分以上に翼状片の手術をたくさんやっているドクターは世界広しといえどもめったにいないと自負しています。臨床の現場で直接得た知識や患者さんからの声に対する回答を中心にご紹介したいと思います。

翼状片とは

白目部分は、一番下が強膜、その上がテノン嚢、その上が結膜、と言う3層構造になっています。真ん中にあるテノン嚢が異常に増殖して、いわゆる黒目である角膜に伸びてきてしまうのが翼状片です。

目の表面は、他の部分の皮膚と同じです。この認識を持つと、話がとてもわかりやすくなると思います。

翼状片は、結膜の「慢性炎症性腫瘍」であると定義されています。鼻側や耳側の結膜に慢性的に炎症が起こっていると、そこのお肉がどんどん盛り上がって大きくなってくるというわけです。例えば怪我や手術をして皮膚を切った場合、そこに赤みや痛み、すなわち炎症が起きます。そこをちゃんとケアしなかったり、体質的に皮膚が弱いとかで炎症が長いこと続いたりすると、みみず腫れのようなケロイド状になって、炎症が収まってからも皮膚が盛り上がったままになることがあるでしょう。それと似たようなものと考えると良いかと思います。

翼状片の症状

物理的な症状の他、どうしても目立つ部分なので、人の目が気になるなどの精神的な訴えをされる患者さんが多いです。具体的な症状としては、
  • 血管がたくさんできてしまう→白目がいつも赤くなって、人からいちいち赤目を指摘されてうっとうしい。人と目を合わせて話せなくなる
  • 炎症部分が盛り上がってくる→まばたきの度にこすってしまうので、慢性的なごろごろ感が発生する
  • 角膜に進入してくる→黒目が欠けて、見た目が悪くなって、気になる。人から指摘されてうっとうしい
  • 翼状片が角膜に進入してから収縮すると角膜をひっぱる→角膜がゆがんで、乱視が生じて、裸眼視力が低下する
  • 極度に進行すると、角膜中央部にかかってくる→裸眼視力のみならず、矯正視力も低下してくる
などです。

翼状片の原因

翼状片の原因、すなわち、なぜ結膜の特定の場所にそんなに慢性的な炎症が起こってしまうのかということですが、いくつかの原因が考えられています。

まず、紫外線はものすごく悪いです。それは、紫外線をよく浴びる人、例えば猟師さんとか、テニスのコーチとか、ゴルフのコーチやプロ、サーファーなどがよくなるので、そう推定しているわけです。紫外線を人にずっと当て続けて翼状片が伸びてくるのを何年もずっと観察した人はいないわけですが、臨床の現場を見ると、紫外線の関与は間違いないと考えるわけです。紫外線をたくさん浴びる人の中でも、特に漁師さんやサーファーによく見られますので、潮風も悪いと思われます。長年のコンタクトレンズ装用も原因になるようです。

これらをまとめると、要は、結膜への刺激が多ければ多いほど慢性的な炎症が起きやすく、結果として翼状片ができやすくなる、ということでしょう。

ではなんで同じようにサーフィンをやっている仲間でも、翼状片ができてしまう人とできない人がいるのですか?と聞かれます。それは、上に挙げた原因をしのぐ一番大きな原因が「体質」だからでしょう。

体質的に結膜が強ければ刺激を多く受けてもならないが、結膜の強さが普通でも、刺激をたくさん受ければなる場合があるというわけです。もっと弱いと、刺激を多く受けなくてもなってしまう、というわけです。

臨床の現場では、「紫外線を特に多く浴びたこともないのになってしまった。一体私の生活の何が悪かったのですか?」という人が一番多いです。繰り返しになりますが、そういう人は体質的に結膜がものすごく弱いとしか考えられないわけです。

ということで、私の結論は、
「翼状片は、結膜への悪い刺激のトータルの量が多ければ多いほどなりやすくなる。また、体質的に結膜が弱ければ弱いほどなりやすくなる。」ですね。

翼状片はなぜ鼻側に多いか

翼状片は通常は鼻側にでき、これらを狭義の翼状片として扱います。時に耳側にできる人もいます。ごくまれに上や下から入ってくる人もいて、偽翼状片(ぎよくじょうへん)と言います。

なぜ鼻側に多いのかですが、目の鼻側は、耳側よりも紫外線が当たりやすいといわれています。鼻に当たって反射した紫外線が入る、耳側から角膜に入った紫外線が鼻側の結膜に当たる、など、諸説あります。また、目を洗った後の汚れた涙は最終的には鼻側に集まってから鼻に流れ込みますので、鼻側は汚れがたまって炎症が起きやすいと思われます。これらの理由により、鼻側に多いのであろうと考えます。と説明すると、「私は耳側にあって鼻側には全くないのですが、いったいどういうわけなんですか?」という人もいるわけなんですが、そういうのはもう体質的にそこが弱いんでしょうとしかいいようがないですね。まぁ、このあたりのことは追求しすぎても治療には何の関係もありませんから、考えすぎないことが大切です。
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