インテリアコーディネイトのプロセス
家具選びと聞いて、あなたはどんなシーンをイメージしますか? 雑誌やネットを見て気になったソファやテーブル。似たものはないかと、大きなショールームにまず足を運ぶ。幾種類もの展示品に触れながら、カタログと実際を比較しつつ、表装とサイズを選んでいく。いわゆるパターンオーダー方式である。また、大型家具は住み替えを機に一新するケースが多いのではないだろうか。普段は、不満を内在しつつも、有りもので済ませることができる。何かきっかけがないと行動に移れないようだ。
だが、一生身につけておきたい貴金属や鞄、あるいは靴などがそうであるように、本当に大切にしたい好きなものこそ、自分のペースで買い揃えていきたいものだ。またそれは、売り手のルーチンにただ乗っかるのではなく、ときに明確になっていない要望を対話の中から形にしていく。ミラノの北、山と湖のある場所を本拠地とする「プロメモリア」。その持てる楽しみのひとつが、造形美だ。シンプルやモダンといった耳慣れた類とはまったく異なるものである。
厳選された素材
それは、一風変わった取材だった。形式ばった媒体説明もないままに、また会話の流れは明確な一問一答方式でもなかった。例えば家具メーカーであれば、そのブランドが一押しするアイテムをまず見せてもらい、特徴を(それはおもに、言われて初めて気付くことが多いのだが)細かく解説してくれる。ここにこんなに手をかけた製品なんですよ、いかがですかと。しかし、「プロメモリア」創業者ロメオ・ソッツィ氏の経歴を語り始めても、富田さん(株式会社トミタ取締役)の口調は淡々としていて、どちらかといえばホームページのテキストをなぞるようなトーンだった。そこで、聞いてみた。「素材選びが特徴のひとつと伺いましたが」。すると、このテーブルの木目をご覧くださいという。
ラウンド型のダイニングは、よく見ると突き板が四分割されていて、斜め対称面に同じ木目を、隣り合わせるそれとは垂直に交わっている。目の密度も、向きの違いで異なったものをあえて選んだようだ。これらが瞬時に、ではなく、ゼロコンマのタイムラグがあって理解できる。面白いと思った。素材の話題は、会話が一周したのち、再びめぐってくる。「彼の仕事場にいって“ちょっと見てごらん”というので、キャビネットのなかをのぞいたら、おがくずの入った小さな瓶がいっぱい並んでいるんです」。ロメオ・ソッツィ氏は、匂いで樹種を選別することができるらしい。