大都市部で整備が進んでいる公共下水道については ≪公共下水道について知っておきたい基礎知識≫ で解説しましたが、大都市郊外や地方へ行けば汚水処理施設として浄化槽が使われている敷地も少なくありません。
ずっと浄化槽を使っている人にとってはごく普通のことも、今まで公共下水道区域に暮らしてきた人が初めて浄化槽に接するとなかなか面倒に感じる場面も多いでしょう。
購入しようとする敷地で浄化槽が使われているとき、あるいは新たに浄化槽を設置しなければならないとき、どのような点に注意するべきなのでしょうか。
浄化槽による汚水処理人口は?
本題へ入る前に、浄化槽(合併処理浄化槽)がどれくらい使われているのかを確認しておくことにしましょう。国土交通省がまとめた2016年度末現在の「処理施設別汚水処理人口普及状況」(震災の影響により福島県の一部は集計から除外されています)によれば、下水道が9,982万人(78.3%)なのに対して浄化槽は1,175万人(9.2%)となっています。
それ以外の施設は、農業集落排水施設等が352万人(2.8%)、コミュニティ・プラントが22万人(0.2%)です。
全体の9.6%にあたる1,223万人については汚水処理施設が整備されておらず、トイレは汲み取り式や、水洗トイレからの汚水だけを処理する「単独処理浄化槽」が大半でしょう。この「単独処理浄化槽」は上記の浄化槽人口に含まれない施設です。
また、都市規模別汚水処理人口普及率による浄化槽の割合をみると、人口100万人以上の都市では0.3%に過ぎませんが、5~10万人の自治体では15.2%、5万人未満の自治体では19.5%に達しています。地方の市町村に居住するなら、浄化槽が必要になるケースも多いでしょう。
浄化槽の仕組み
一般に使われる浄化槽は、BOD除去型「嫌気ろ床接触ばっ気方式」、高度処理型「脱窒ろ床接触ばっ気方式」などですが、簡単にいえば「微生物の働きによって水をきれいにする装置」です。近年は、そのほとんどがFRPなどプラスチック製となっています。浄化槽の仕組みや構造、環境負荷などについて詳しく知りたい方は、一般社団法人全国浄化槽団体連合会【全浄連】のサイトや環境省による【浄化槽サイト】をご覧ください。
水洗トイレからの汚水と、台所排水、浴室排水、洗濯排水などの生活雑排水を合併処理浄化槽に流入させた後、複数の槽で沈殿などによる浮遊物の分離除去、有機物の浄化などを行ない、きれいになった上澄み水を消毒槽に通したうえで放流します。
このとき、汚水に含まれる有機物を浄化する役割を担うのが微生物(バクテリア)であり、ボルティセラ、ワムシ類、リトノータス、アスピディスカ、カルケシウム、ミジンコ、クマムシ、エアロゾマなど、さまざまな微生物が浄化槽の中で生きているのです。
そして、接触ばっ気槽内の好気性微生物に空気中の酸素を送り込むのがブロワ(エアーポンプ)であり、たいていは浄化槽の上の地面などに置かれています。
なお、浄化槽法の改正により2001年(平成13年)4月1日以降は、水洗トイレからの汚水だけを処理する「単独処理浄化槽」の設置が原則としてできなくなり、新たに設置する際は生活雑排水を併せて処理する「合併処理浄化槽」のみが認められます。
(7年以内に下水道が供用開始される「下水道予定処理区域」を除く)
法改正以前から使われている単独処理浄化槽の場合、その使用までは禁止されませんが、合併処理浄化槽への転換を図るよう努力義務が課せられています。
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