年にわずかしかない、G1奪取のチャンス

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G1の中でも最高峰とされるのが「日本ダービー」(写真 JRA)

そんな最高峰のG1レースが日本で行われるのは1年で20回以上。「なんだ、いっぱいあるじゃん」と思うかもしれませんが、しかし、競走馬にはそれぞれ得意な距離があり、各距離で頂点を競うもの。となると、本当に自分の得意な距離で行われるG1は年に2・3回しかありません。

ちなみに、1年で生まれるサラブレッドの頭数は約7000頭。その世代の中でG1を勝てる馬は毎年10頭ほど。G1とは、高い才能と運を持った限られた馬たちが、それぞれの得意部門で頂点を競う、最高峰のレースといえます。くどいでしょうが、何度でもいいます。最高峰のレースなんです。

どんなレースも、G1につながっている

さて、すべての馬が目標とするのがG1となると、それ以外のレースは、それぞれの馬がG1を見据えて戦うレースといえます。そう、これこそが競馬の面白さ。

競馬のレースは、ただ毎回シンプルに勝利を目指して戦っているわけではなく、各馬がG1の舞台に向けて様々なステップを踏んでいく、その過程ともいえるのです。

つまり、G1以外のレースでは、ローマンレジェンドのように、G1に出るための賞金を稼ぐ馬もいれば、時にはG1でライバルと激突する時に備えて、前のレースで駆け引きを行うケースもあります。

有名なのは、2007年春にあった、2頭のライバルにまつわるエピソード。

エピソードの主役となるのは、ダイワスカーレットとウオッカという2頭。後に名馬としていくつものG1を勝つ同世代のライバル牝馬は、デビューの翌年、2007年の3月に行われた「チューリップ賞」というG3レースで、初めて激突します。このレースは、その1カ月後に行われるG1・桜花賞と同じ距離・コースで行われる、まさに前哨戦。

レースは、ダイワスカーレットが序盤でウオッカより前に行き、直線でウオッカがスパートするのを待ってエンジンをかける展開。マラソンでいえば、有力2選手が終盤までジッとにらみ合いながら、最後の最後、短い距離での瞬発力勝負というイメージ。

そしてどうなったか。この戦いを制したのはウオッカでした。しかも、明らかに「一枚上」の勝ち方。本番の桜花賞でもウオッカが勝つと予想する人が大半でした。
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チューリップ賞のゴール写真。2着の騎手を見て何か気付きませんか?(写真 JRA)


しかし、上の写真をよく見てください。ウオッカの斜め後ろで2着に敗れたダイワスカーレットの騎手が、何だかニヤリと笑っているような気がしませんか? 考えすぎかもしれませんが、しかし本当に笑っていてもおかしくありません。なぜなら、ダイワスカーレットは本番の桜花賞で見事にウオッカを負かしたのですから。

2007年桜花賞の動画はこちら(リンク先の「HIGH」か「LOW」ボタンをクリック)
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前哨戦から作戦を変えて、本番ではダイワスカーレットの完勝(写真 JRA)

ダイワスカーレットが逆転した理由。それは、チューリップ賞のような、ウオッカが迫ってくるのを待ってからの瞬発力勝負では分が悪いと見たダイワスカーレットの安藤勝己騎手が、相手の意表を突くように、早いタイミングでスパートしたことでした。

ウオッカにとっては、チューリップ賞のイメージがありますから、まさに予想外の出来事。前回と同じくゆったり最後に仕掛けようと思っていたウオッカは、想定外の早い仕掛けで引き離すダイワスカーレットを必死に追ったものの、すでに流れは相手。一度つけられたリードを挽回できず、完敗してしまいます。

そう、ダイワスカーレットとそのジョッキー・安藤勝己は、前哨戦のチューリップ賞を布石にして、逆転勝利を呼び込んだのです。

これ以外にも、G1で勝利を得るためにG2やG3では馬にレースを教え込んだり、いつもと違うスタイルを試したりするケースは多々あります。言ってみれば、競馬のレースは点ではなく、線でつながっている。そしてそのゴール地点にG1があるんですね。


G1とは、すべての競走馬とそれに関わる人が目指す、各部門のチャンピオン決定戦。その距離、そのコースで頂点を競う最高峰のレースなのです。くどかろうが、私は何度でもいいます。競馬における最高峰のレース、それが「G1」なのです。

【関連サイト】
JRAホームページ|2013年G1レース一覧(※東京大章典を除く)
JRAホームページ|もっとケイバ!|ルールと仕組み –上級編-
ローマンレジェンド|競走馬データ –netkeiba.com
ダイワスカーレット -JRA



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