ワーキングスペースを復活する
河村邸のワーキングルーム(アトリエ)には長さ8mのテーブルがあり、家族が一列になって仕事や勉強をする。 |
いまの住宅プランでは、リビング、ダイニング+キッチン、寝室、子供部屋という部屋割りが一般的です。リビングは家族団欒、ダイニング+キッチンは調理と食事、寝室・子供部屋は就寝や勉強に使われます。
昔の日本の家には、土間や納屋など、家族が共有するワーキングルームがありました。そこは父親や母親が仕事をする場所で、子供達の遊び場でもありました。また近所の人が気軽に立ち寄れる、パブリックな場所としても使われました。
この伝統的なワーキングルームは、戦後の都市化やマンション化などにより、書斎(父)、キッチン(母)、子供部屋(子供)と個室化していきました。河村さんの自邸は、個室化した住宅プランを見直し、家族が集るワーキングルームを復活させた実例ともいえます。
仕事を通じたコミュニケーション
ダイニング・キッチンはコンパクトにまとめられている |
しかしリビングがなくては、家族が寛げないし、子供部屋がないことに不満はないのでしょうか?河村家では、いつも何かしているのが家族の常識になっているそうで、ワーキングルームに居るときが寛ぎの時間なのです。
その環境の中で、家族は自然と情報交換していきます。新しくでたソフトの話や、最近観た映画など、様々な話題がのぼります。リビングだと自然に出来ない話でも、仕事や勉強をしているとコミュニケーションを取りやすいものです。
子供部屋が引きこもりを生む
実はスキップフロアの2階部分には、子供が寝るスペースがあります。しかし畳2.5畳ほどの小さなスペースで、布団を敷く広さしかありません。河村さんは「広くてテレビやパソコンのある子供部屋なら、必ず閉じこもるようになる」といいます。夕食が終われば子供は部屋に引きこもり、家族バラバラの生活になります。こうした生活習慣が、ニート問題の要因になっているのは明らかです。子供部屋で不自由のない生活が出来るのなら、なにも外にでる必要はありません。父親の仕事姿を見たこともなければ、生涯をかける仕事に対する心構えも育ちません。
幸せがあつまる家の基本は、家族が集る場所を作ること。いまそれはリビングではなく、ワーキングルームにあるのかもしれません。パソコンがひとり一台の時代になり、家族のコミュニケーション空間は大きく変化しているのです。
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