住みたい街 首都圏/子育て・環境重視の街選び

子育てに良い街 勝手に選ぶベスト10

自治体によってサービスの内容が異なることはよく知られるようになってきましたが、教育内容、子育て支援にはその差が大きく出ます。ここでは独自の子育て施策を行っている自治体などをご紹介します。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

サイエンスレクチャー

子どもたちは基本的には好奇心旺盛。刺激してあげれば伸びるはず。写真はつくば市で行われたサイエンスレクチャーなるイベント(クリックで拡大)

今回は独自施策を中心に特徴のある子育て支援をしている街を10市区をピックアップしてみました。家庭の事情、教育方針などによって、何が良いかは異なるはずですから、ここに挙げてあるからといって、必ずしも我が家にとって良いとは限りませんが、もし、条件に合うことがあれば参考になるはずです。

 

また、注意していただきたいのは、乳児時代に良い施策があるからと引っ越しても小学校時に同様の施策がないことも、その逆もあり、さらにその自治体が良いと評判になって子育て世帯が集中、定員を遥かに越すような事態も起きています。ひとつの施策だけですべてを判断するのではなく、総合的に見て住みたい場所、住みやすそうな場所を選んでいただきたいものです。

保育ママ、独自の乳児養育手当、読書科など
オリジナル子育て施策充実の江戸川区(東京都)

赤ちゃん

子どもの年代によって必要な子育て支援策は異なる。乳幼児と就学後でサービス内容が異なる自治体が多いので、小学校入学を機に家を買うのは理に適っているのかもしれない

23区内でずっと合計特殊出生率出生率トップを続けているだけあり、江戸川区には各種の独自子育て支援策が充実しています。例えば保育ママ。少人数の子どもを保育ママと呼ばれる人たちの家庭で保育してもらう制度で、家庭的な雰囲気が保育所とは異なるところ。現在は他自治体にも普及していますが、江戸川区が発祥。0歳児から利用でき、保育料も保育所に比べて安く設定されています。

 

よく知られたところでは幼稚園の授業料等への手厚い助成も。江戸川区の幼稚園は大半が私立ですが、公立との差額が助成されるので、公立を作らなくてもOK、親も私立だからといって負担を気にしなくても済むという仕組みになっています。助成と言う意味では、江戸川区独自の乳児養育手当も大きなポイント。所得制限はあるものの、ゼロ歳児に対し、月額1万3000円が支給されます。

 

江戸川区の公園

休日の江戸川区内の公園。子どもを複数抱えて親も多く、子育てに良い街と定評があるだけのことはあると実感

もう少し、大きな子ども向けには学童保育の拡大版のような「すくすくスクール」なる活動もあり、放課後の子ども達が地域の人たちにあれこれ教えてもらったり、遊んだりできるようになっています。区の、地域で子どもを育てるという姿勢が良く分かります。この姿勢が子育て世帯が孤立せず、子育てを楽しめる状況につながっているのでしょう。

 

また、小学生向けには2012年度から読書科なる授業を導入しており、本好きの子が増えているとか。日本語の読解力は他科目を理解する上で欠かせない能力ですから、読書の推進は基礎学力向上に役立つものと思われます。

 

ただし、江戸川区の子育て施策の中心にあるのは小さな子どもは家庭で育てるのが望ましいという姿勢。そのため、保育ママはゼロ歳児保育をしますが、公立の保育所ではゼロ歳児保育はしていません。病気の時は親が面倒を見るべきだと言う方針から病児、病後児保育については消極的な様子。幼稚園の助成は手厚いものの、保育所にはいささか冷たいようで、保育所利用を前提としている人にはやや使いにくい制度もあるかもしれません。

 

小中一貫教育のパイオニア。市民科その他、
実社会に役立つ独自教育も行う品川区(東京都)

日野学園

いまだに人気の高い小中一貫校日野学園。その後、続々と一貫校が登場した

2006年4月から区内の全ての小・中学校(小40校、中18校)で小中一貫教育をスタートさせ、「義務教育学校」の創設を視野に入れた「小中一貫校日野学園」を開校したことで知られる品川区。以降、続々と小中一貫校が登場するようになりました。しかし、品川区が先駆けとなったのは小中一貫教育だけではありません。学校選択制、外部評価者制度、教科担任制、早期からの英語教育導入なども、同区が先陣を切り、一般的になっていったのです。その意味では公立学校の教育に期待するなら品川区は手堅いところといえます。

 

また、区独自の科目として「市民科」、自分の将来を金銭面から考えさせる将来設計学習「ファイナンス・パーク」、働くということを意識させる経済活動体験「スチューデント・シティ」などがあり、教科書だけに止まらない学びの場も用意されています。

 

さらに利便性の高い立地だけに働くお母さんに対しての施策も比較的手厚いのが特徴。パート就労者や自営業等で短時間の保育を継続的に必要とする人を対象にした短時間就労対応型保育は新しい試みですし、延長保育、夜間保育も広く行われています。区立の保育園6園が夜10時までの夜間保育を行っている点からも、区の姿勢が分かるというものです。 ただし、保育料が安いというわけではありません。

 

教育日本一をめざし、立地を生かした
最先端教育を志向するつくば市(茨城県)

つくばの住宅地

つくばエクスプレス沿線は新しく開発された住宅地が多く、価格的にも手に入れやすい(クリックで拡大)

2012年に教育日本一を目指してという市の教育振興プランを発表したつくば市。科学の街を標榜する街だけに、立地する各種研究機関、教育機関などと連携した教育活動は他とは一味違うものがあります。つくばちびっ子博士事業、つくば科学フェスティバル事業、つくば科学出前レクチャー事業など科学と触れ合うプログラムはこの街ならではです。

 

サイエンスレクチャー

エリア内に立地する企業と連携、各種のイベントを開催しているつくば。身近に科学があれば、おのずと関心も湧くはず(クリックで拡大)

また、茨城県もこのエリアに子育て世帯人口を増やそうと「子どもが育つ街研究会」を作り、つくばスタイルアカデミースポーツクリニック、つくばスタイルサイエンスレクチャーなどといったイベントを開催。PRに力を入れています。子育て施策も含め、自治体が独自性を打ち出そうとしているのは新しく住んでもらう人を増やしたいためもあるわけですから、本当はそのためのPRにはきちんと力を入れなくてはいけないはずですが、今のところ、大半の自治体にはその意思はあまり見られません。その中にあって、しっかりしたPR活動を行っているこのエリアには先見の明があるように思われます。ちなみにつくばエクスプレス沿線では千葉県流山市にも同様の明確な意思があり、注目です。

 

IC教育

パソコンを使って学習を進める子ども達。今後、他の自治体も追随することになるはず(写真/茨城県つくば地域振興課。クリックで拡大)

科学の街だけあって、教育でのICT利用も他自治体に一歩先んじており、たとえばインターネットを使って自宅学習ができるオンラインスタディを導入しているのはここ、つくば市と成田市くらいではないでしょうか。そのほか、小中一貫教育の推進、英語指導助手や理科支援員の配置、放課後学習チューター事業、つくばスタイル科の実施なども展開されており、今後も新しい施策が予定されています。街中で各国からの留学生、研究員などの姿を見ることも多い、インターナショナルな街でもあり、そうした意味でも子どもの教育環境としては他にない部分があります。

 
続いて神奈川や都内で人気のあの街も登場。

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