あえて英語以外の科目に力を入れ、
地元との連携を重視する世田谷区(世田谷区)

三軒茶屋

三軒茶屋や二子玉川のイメージが強いが、世田谷区は農地も多く、住宅街はのんびりした雰囲気の場所が多い

読書科、市民科など、ここまでにいくつか、当該自治体でのみ行われる独自科目をご紹介してきましたが、これは学習指導要領に寄らずに、学校や地域の特色を生かした教育課程を編成できるようにする、教育課程特例校制度によって実現したもの。かつて内閣府が認定していた教育特区に替わるもので、2008年度から文部科学省の指定になり、各自治体、学校などで活用されています。

 

英語教育

英語教育に力を入れる自治体は多く、その数は年々増加中

そのうち、もっとも多いのが英語。社会全体として苦手意識があるせいか、特区時代から英語を独自科目としている自治体が多いのですが、世田谷区の場合は日本語。2007年度から区立小学校・中学校全校で教科「日本語」を実施しています。具体的な内容としては短歌、俳句、古文、漢詩、論語、近代詩などの音読や朗唱を通して、日本語の響きやリズムを楽しむ学習を行っているのだとか。また、地域に伝わる民話や世田谷区の地名の由来や、日本の伝統文化などについて学んだり、調べたりする活動も行っているそうです。

 

また、通学する学校を選べる、いわゆる学校選択制度をとる自治体が増えている中、世田谷区では地域とともに子どもを育てる教育を進めるとして、基本的には自由に通学校を選べない仕組みになっています。この地域で育てる姿勢の延長線上にあるのがすべての区立小学校・中学校に設置されている学校協議会、約8割が指定されている地域運営学校です。

 

これは保護者や地域の人たちが学校運営に参画してもらうことで、地域に開かれた学校を目指そうというもので、世田谷区が先駆。学校、地域ごとに取り組み、具体的な施策などには違いはあるものの、地域と一体となった子育てが進行しているようです。この施策、本来は子どものためのものですが、こうした取り組みに参加している人たちの声を聞くと、大人たちも実は地域に参加するきっかけを欲しがっていたようにも思えます。特に会社以外での人間関係を構築しにくいお父さんたちにとっては、地域に友人を作るいいチャンスでもあるようです。

 

ちなみにここまで述べてきた自治体以外で、独自科目を作っている例としては港区(国際科)、荒川区、杉並区、埼玉県新座市、同戸田市、狭山市(英語科)、千葉県松戸市(言語活用科)、埼玉県さいたま市(潤いの時間)などなど。また、葛飾区では2013年から小学校に体力向上科を導入する予定です。

 

少人数学級の先駆け、きめ細やかな施策で
学力、体力向上を図る志木市(埼玉県)

志木市役所

江戸時代には水運で栄えた志木市。商店街などには古い建物も残り、緑も豊富。写真は市役所

昨今、各自治体が積極的に取り組んでいる施策のひとつに小学校低学年時に一人ひとりに行き届いた教育を行うことを目的とした少人数学級があります。その先駆が埼玉県志木市です。志木市の場合には小学校1~2年生は29人が上限で25人程度学級、3年生32人上限の少人数で学級編成を行っており、県から配置される教員では不足する人員については市独自で非常勤講師を選考、採用しています。人口7万人とコンパクトな自治体でもあり、きめ細やかな教育を目指しているというわけです。

 

黒板

さいたま市などでも基礎学力向上のため、放課後や土曜日などを利用して補習的な授業を行っている

同じことは中学3年生を対象に、放課後、行われている基礎学力アップ夢応援事業などにも見られます。進路に応じた学力をチューター支援員による放課後の小集団、個別指導でバックアップしようというもので、多少の実費は必要ですが、塾その他に通うよりは手頃に、いつもの教室で勉強ができるというわけです。基礎体力の向上にも泳力向上指導員を派遣したり、逆上がりができるぞ教室を支援したりと、ちょっとした「できる」で成功体験を積ませるような気配りの施策もあります。

 

また、今後は保育ママを増やし、待機児童ゼロを目指したり、病児・病後児保育施設の設置、教育環境改善のために小中学校の冷暖房を見直すなどの計画もあるそうで、より子育てに良い街になることを期待したいところです。

スピーディーな保育所増で
待機児童数ほぼゼロを達成した横浜市(神奈川県)

2013年2月、杉並区で保育所に入所できなかったお母さんたちが区に対して異議申し立てを行ったというニュースが話題になりましたが、統計上は数が減っているはずの待機児童問題はいまだに深刻です。

 

野毛動物園

横浜市の場合、市域が広いのでどこに住むかで保育以外の子育て環境は異なってくるので注意が必要

この問題に真剣な取り組みを見せてきたのは横浜市。2010年には約1500人と全国一認可保育所の待機児童数が多かった横浜市ですが、2013年4月にはほぼゼロになる予定と見事な対処ぶり。その陰には市独自の基準を満たす保育所「横浜保育室」の新設のほか、3歳以上で定員割れしていた既存保育所の部屋割りを見直し、午後6時半までの預かり保育を行う幼稚園の増加に加え、各区に1名ずつ配され、家庭の事情に合わせた保育を提案する相談員「保育コンシェルジュ」の存在があります。

 

保育コンシェルジュは、認可外保育所や幼稚園の預かり保育など、子どもを預けられるあらゆる施設の情報を把握しており、各家庭の事情に合わせて適切な施設、方法を教えてくれる存在。認可保育所しか知らなければ、そこしかないと思ってしまいがちですが、他にも施設、方法があることが分かれば待つ必要がなくなる家庭もあるというわけです。

 

横浜市ではこのほか、地域内で子どもを預けたり、預かったりする「横浜子育てサポートシステム」、子どもが自由に遊びを創造できる場「プレイパーク」の設置、父親の育児参加を促す「パパ講座」など、ちょっと変わった施策もありますが、総じて小学校入学前の子ども、小学生の放課後に重点を置いた取り組みが多いようです。

 
続いてもファミリーに人気の高い千葉県、都下の街などが登場。