1981(昭和56)年以前に建てられた物件は危ないはずなのに

旧耐震の建物は要注意

耐震対策を怠ると……

世界で起こるマグニチュード6以上の地震の約20%が日本で発生しています。日本は、今日明日にも大地震が起きても不思議ではなく、建物には徹底した耐震化が求められています。

大家さんの場合、ご自身がお住いの建物だけでなく、経営する賃貸住宅も耐震化する必要があります。必要な補強を行わないまま放置していると、震災などで倒壊や損傷があった際、大家さんが責任を問われることもあります。

耐震性を高める為には、建物の構造も大切ですが、地盤の状態やそれに応じた基礎工事が行われたかどうかも大きな問題となります。日本では1981(昭和56)年6月に建築基準法の耐震基準が大きく改定されていますが、それ以前に建てられた建物の多くは、今よりも緩い基準に沿って建築されています。阪神淡路大震災では、6,433名の命が失われましたが、その80%が建物の倒壊によるものであり、倒壊した建物のほとんどが1981年以前に建てられたものでした。

1981年以前に建てられた建物の場合、また、更に築年数の古い賃貸物件については、建物の耐震性を診断し、土地の地盤と現状の基礎の状況を知っておくべきなのです。しかし、多くの大家さんは「それは、解かってはいるが……」とおっしゃり、先に踏み込めずに悩んでおられるケースが多く、最近の相談件数にも表れております。

老朽物件は耐震診断=耐震補強を覚悟しなければならない

診断の結果、建物の耐震性が不足していると分かったら、耐震補強をしなければなりません。しかし、多くの大家さんの悩みは、もっと他のところにあります。それは、空室対策と家賃下落対策なのです。

耐震補強に多額の投資を行っても、入居者に安心を与えることにはなりますが、賃料の増額や空室率の改善に直ちにつながりません。老朽化の進行したアパートやマンション、ビルは目先の修繕に追われ、空室・滞納・賃料下落による収益の悪化スパイラルに陥っているケースが多く、多くの大家さんの悩みの種になっております。

たとえ、建物の耐震補強を思い切って行っても、基礎については後から補強することはできません。1981年以前に建てられ、調査の結果、基礎工事に問題があると分かった建物は、建て替えを検討することも念頭に置かなくてはなりません。

しかし、建て替えには現状入居者の立ち退き、立ち退き中の収入減、解体費用、新築にかかる建築費や諸経費など膨大な支出と大きなエネルギーが必要となってきます。まさに、気力・体力・判断力が問われる大事業となるのです。そのような、気の遠くなる事業を考えると、とても耐震診断に踏み込めない気持ちは本当によくわかります。

しかし、そこで目をつぶっていても何も解決しません。多くの大家さんの耐震への関心は高いことはわかっております。耐震問題や立ち退きに関するセミナーなどでも、大きな震災の直後にはたくさんの人が集まりますが、2、3年と経つとみな興味を失ってしまいます。高い意識を持ちながらも「のど元過ぎれば熱さ忘れる」という諺があるように、目先の難題からついつい気持ちが遠ざかってしまうのです。

しかし、日本が地震大国であるという事実は変わりません。そこに住む以上、耐震性はどんなに重視してもしすぎることはありません。いざという時に、入居者の命と財産を守れるような建物にしておく「使命」が大家さんにはあると考えます。あわせて、安全性の情報を入居者に提供し、安心させてあげる「使命」もあるのです。