タレ眉にタレ目。身長180cm以上で肩幅もひろく、顎までわれた立派なスコットランド男のはずのなのに、なぜかいつも、上目遣いでこちらを見上げる、捨てられた子犬のような印象を受ける彼。そんな彼が主人公を演じる『ムーラン・ルージュ』は、自由と芸術と、そしてなにより、愛に殉ずるお話です。
あらすじ
彼の愛する相手はパリのナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」のトップスター、サティーン。しかも彼女は長年の夢である「本物の」女優として舞台にたつため、資産家の公爵をパトロンにしようとしています。かたや彼は上流階級出身とはいえ、田舎からでてきたばかりの一文無しのボヘミアン。大作家になるという大きな夢と野心、そしてなにより芸術へのあふれる情熱はありますが、残念ながら実績は0。
愛とは空気のようなもの、そう謳いあげる彼に共鳴するロートレックなどの仲間の協力で、愛するサティーンを主役とした一大ミュージカル劇を、パトロンの公爵をまきこんでブチ上げようとします。
おなじみのヒットナンバーが目白押し
劇中にちりばめられた歌は、誰もがお馴染みのヒットナンバーばかり。ジョン・レノンの”ALL YOU NEED IS LOVE”を歌ったかと思えば、ホイットニー・ヒューストンのボディーガードのテーマをふたりで見つめあいながらデュエット。わたしが一番好きなのは、曲調をかえながら繰り返し歌われる”Come what may”です。この映画をみている間中、主役ふたりのすばらしい歌唱力に(なんと吹き替えなし!)酔いしれ涙ぐみ、脇を固める名優たちが群舞するロクサーナのタンゴのシーンでは、その熱気にあてられ胸がつまります。
恋人たちの切ない恋に流す涙、素晴らしい歌声と踊りに感極まり流す涙。見る人によって涙の種類はちがうかもしれませんが、この作品を観るときにはどうぞ、大きなハンカチをご用意ください。
さもないと、しゃくりあげて初めて自分が泣いていることに気づき、ティッシュを求めて席をたつことも、停止ボタンを押すのもおしく、洋服の袖でぬぐう羽目になります。