「生きてるってことは、それだけでたいしたいいもんなんだ」
三浦哲郎の小説を原作に、劇団四季がミュージカル化した作品です。東北の村を舞台に、東京からの転校生でいじめられっこのユタ(本名は勇太)が、座敷わらしと出会って成長していく様を描きます。これは幼稚園ぐらいの子どもが観ても、たぶん泣くと思います。それくらいわかりやすく、訴えかける強いメッセージが込められています。
それは劇中の台詞にも随所表れてきますが、座敷わらしという「生まれもしないし、死んでもいない」不思議な存在が、体現しているような気もします。いじめられて、生きる気力をなくしたユタが、「死にたくなって、何度も鉄橋のところに行った」と告白するシーンがありますが、そこで座敷わらしはユタを怒鳴りつけます。「ばかやろう! 生きてるってことは、それだけでたいしたいいもんなんだぞ」と。
これだけでもはっとしますね。日々けっこう適当に生きてる私たちは、自分の意思で生きてると思い込みがちですが、実は自然や神様みたいなものに「生かされている」のを忘れます。その傲慢さが、おそらく不安や絶望を生むのだろうと考えると、命というものは、いかにシンプルで愛に満ちているのかがわかりますね。そこで「涙が止まらなく」なるわけですが、それは若干の悲しみを伴った、あたたかい感謝の意味も含む涙なのだと思います。
■ユタと不思議な仲間たち(劇団四季)