「生み出す(produce)」のを生業とする人たちが主人公の生きざまが滑稽
その昔は大物だったのに、今ではすっかり落ちぶれてしまったブロードウェイのプロデューサー。興行が失敗したほうがもうかることを知り、担当の会計士と組んで、確実に失敗するミュージカルを作ろうと企むのですが……。『プロデューサーズ』は、まさに演劇をプロデュースする人たち、すなわち「生み出す(produce)」のを生業とする人たちが主人公です。
主人公たちの目的は、わざと失敗作を作ることですから、脚本やキャストを選ぶ際、意図的に「どう見てもおかしい」人たちを選んでいます。その「明らかにおかしい」人たちを見ているだけで、十分笑いが止まらないのですが、さらにおかしいのは、主人公たちが「生み出す」ことに必死になっているさまがうかがえるからだと思います。
「生みの苦しみ」とはよくいったものですが、それを仕事にすると、自分自身を削ることにつながる場合も多くなります。そうすると、かつて大物だったプロデューサーは、自らの感性や心を削った結果、いまの落ちぶれた地位を手に入れて、感性を必要としない仕事の会計士は、ここで初めて「自分自身を削る」作業を覚えていくのです。
つまり、この作品の主人公の2人の対象的な「生きざま」が笑えるのであって、かつての栄光にしがみつく無様さや、悪巧みをする狡猾さは、度を越すとまさに滑稽であるのを思い出させてくれます。
それでもこの「転んでもタダでは起きない」エンディングは、非常にアメリカ的な前向きさを表現しており、「人生は滑稽だけど、それでも生きるのは楽しい」と思えるはずです。
■『プロデューサーズ』(2005年映画版公式サイト)
http://bd-dvd.sonypictures.jp/producers_rent/