石川尚の一家一脚・椅子物語
#039 イームズのラウンジチェア+オットマン
ある友人の話。
彼は住宅業界に従事している建築家。通常は人様の住まいをアーした方が良い、コーした方がいいと仕事をしているが、つい最近自宅を新築した。
親戚家族の大所帯共有住宅、全体をうまくまとめることに苦労したと話していたが、無事完成したことがとても嬉しい様子、いつになく至福の微笑みだった。
彼からの誘いもあり、また彼がどんな住まいを創ったのかという興味もあり、新居におじゃました。
その住まいは小高い丘の上に建ち、輪郭がはっきりとした素材感のある外観。そして外観同様室内も質素で合理的、そして使い易く温かい空間だったが、私が一番嬉しかったのは、なんといってもそこにあるファニチャーだった。
リビングダイニングには、8~10人がゆったりと席に着ける大振りのアンティークテーブル。テーブルの周りには、彼がこだわって集めた小椅子が配置されている。もちろん、私がデザインした椅子も仲間に加わっていた。
しかし、なんといっても圧倒的存在感は、一脚の椅子。なんとも温かい雰囲気のテーブル周りと呼応するように鎮座のラウンジチェアが彼一番のお気に入り。
『新居に移って早く家に帰るようになったよ。皆でワイワイ食事を愉しんだ後、このラウンジチェアに身をあずけ、大好きなショパンを聴いている。時の経過を忘れ一日の疲れを解してくれるんだよ。』
これで至福の微笑みの理由がわかった。
彼が憧れていたあの椅子を手に入れたのだ。
さて、次のページで憧れの一脚:ラウンジチェア+オットマンをご紹介しよう。