輸入車/注目の輸入車試乗レポート

大人の日常に、グローバルコンパクトのイプシロン(2ページ目)

自動車産業の“グローバル”化によりクライスラーブランドから登場。先代、先々代と“小さな高級車”としてならした(ランチア)イプシロンだったが、現行モデルでもその路線は貫かれている。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

“小さな高級車”として、品のあるライドフィール

クライスラーイプシロン

最高出力85ps/最大トルク145Nmを発生する875cc直2ターボエンジンを搭載。5速シーケンシャルトランスミッションのデュアルファンクションシステムが組み合わせられる

というわけで、改めて、クライスラーイプシロン、である。

クライスラーだろうが、ランチアだろうが、中身さえよければそれでいい、とは思わないクチだけれども、クルマに罪はない。心のなかでは、やっぱりランチアバッジが欲しいよなあ、と思いつつ、ハンドルのでっかいクライスラーマークに辟易しながら、ドライブしてみた。

ちなみに言っておくと、ボクはクライスラーが嫌いだと言っているのではない。300Cにも乗っていたことがあるくらいだから、好きな方だ。クラシックなクライスラーも好物である。

要するに、ごりごりのブランド保守派である、というだけであって、イタリアでランチアテーマに乗ったなら、ランチアマークにがっかりしながら運転することだろう。コイツはクライスラー300なんだぞ! って……。
クライスラーイプシロン

市街地走行などで燃費を抑えるECOスイッチ(エコノミーモード)を採用した。このボタンを押すとエンジンは最高出力77ps/最大トルク100Nmに抑えられ、シフトの変速やステアリングアシストもより経済的な制御となる。アイドリングストップ機構も備え、JC08モード燃費は19.3km/l

先代、先々代と“小さな高級車”としてならした(ランチア)イプシロンだったが、現行モデルでもその路線は貫かれている。ただし、ややインテリアの見栄え質感が落ちたように思うのは、気のせいか。見ために派手にはなっているのだけれど、従来型にあったシックさが、少し薄まった。

メカニズムのベースは、定評のあるフィアット500ツインエアと同じ、である。同じ、なのだけれども、もっと洗練された、品のある仕上がりになっている。NVH性能が、500とはまるで違う。軽快でしなやかな走りを身上としつつも、扇動的なエンジンフィールやサウンドは少しばかり影をひそめた。はっきりと、上質なライドフィールを実現していて、そこがとてもランチアらしい。

とはいえ、ミッションは、例のシングルクラッチ2ペダルセミATだから、トルコンATのように無造作に走らせると、どうしてもアップシフトでぎくしゃくする。できれば、MT車を乗るように、アップシフト時にアクセルペダルをゆるめて、スムースな変速を促したい。

頑張って走らせたときの、踏ん張った走りもなかなかに見事だ。このあたり、さすがにクルマ運転好きの国から生まれただけあって、攻めれば攻めるほどに楽しくなってゆく。フィアット500にも共通する美点である。

乗っていて自然とほがらかになるフィアット500ツインエアも捨て難いけれど、人間、そう毎日毎日元気いっぱいでいられるはずもなく、あからさまに明るいヤツと向き合うことがツラい日だってあるだろう。まずはより落ち着いた走りをみせるイプシロンの方が、大人のデイリーユースには向いているのかも知れない。

ちなみに、高速ツーリングも見かけに寄らず大得意で、クルージング燃費も10km/l代後半と、素晴らしい。
クライスラーイプシロン

ゴールドには15インチ(タイヤサイズ 185/55R15)、プラチナには16インチ(195/45R16)のアルミホイールを装着

イプシロンは、アメリカ人が作ったパスタ(不味そうだ)では決してない。イタリア人が作ったハンバーガー(旨そうだ)でもない。イタリア人が作った旨いパスタ、なんだけれども、“ハードロックカフェ”で売っているだけだ。
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