輸入車/注目の輸入車試乗レポート

大人の日常に、グローバルコンパクトのイプシロン

自動車産業の“グローバル”化によりクライスラーブランドから登場。先代、先々代と“小さな高級車”としてならした(ランチア)イプシロンだったが、現行モデルでもその路線は貫かれている。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

クライスラーのポーランド製“イタリア車”

クライスラーイプシロン

日本ではベーシックグレードのゴールド(235万円)と豪華装備のプラチナ(260万円)をラインナップ。ボディサイズは全長3835mm×全幅1675mm×全高1520mm

テレビをみていて、卒倒しそうになった。アナウンサーが、“アメリカ車も本格的なコンパクトカーを造る時代になった”とかなんとか生真面目に語りながら指差している先に、ボクのアタマのなかでは典型的なイタリアンカーとなっている小粋なハッチバックがあったからだ。

“クライスラーイプシロンは……”とアナウンサーが説明を続けている。そうか、そうだった、ボクのよく知るランチアイプシロンは、日本ではクライスラーブランドで売られるんだった。

自動車産業は、言うまでもなく、“グローバル”である。日本のブランドだって、世界中で造られている。

昨今の自動車産業では、OEM生産が常識となっている。プジョーだって三菱のクルマを売っている。

だから、イタリアの上級ブランドで、ポーランドで造られる小型のランチアが、アメリカの匂いぷんぷんのクライスラーバッジを付けて、日本市場で売られた、としても、何ら不思議じゃない。そういう世の中である。
クライスラーイプシロン

リアドアのアウターハンドルをピラー付け根部分に配置、縦型LEDテールランプや曲面ガラスなどを用いた個性的なスタイリング

でもなあ、“アメリカのメーカーも本格的に力を入れはじめた”って言われるほどじゃあ、ないと思うけれど……。まあ、クライスラーもメキシコ工場でフィアット500を造りはじめたことだし、これがコラボレーションのシナジー効果だと言われれば、納得するしかないんだけれど、何だかなぁ。

要するに、フィアット・クライスラーブランドは、こう決めたわけだ。ランチアはヨーロッパローカルブランド、クライスラーはグローバルブランド。だから、イプシロンと同時に発売されたアッパーミドルセダンのクライスラー300は、これもまたベース設計は2世代前のベンツとフクザツな背景があるけれども、イタリアではランチアテーマとなる。ちなみに、ダッジもまたアメリカ市場専用のローカルブランドになるようだ。

ランチアファンが怒るだろうよ、と思うのは、どうやら好き者だけらしい。そもそも、モダンランチアの歴史など、日本ではとうの昔にすたれてしまっている。ガレーヂ伊太利屋が“ランチアの灯を消すな”とばかり、孤軍奮闘、頑張ってはくれていたけれども、多くの日本人にとって、ランチアといえばせいぜいデルタやテーマ、ひょっとするとストラトスくらいで思考停止になっているに違いない。
クライスラーイプシロン

メーター類をダッシュボード中央に配置。人が触れる部分には柔らかな素材を用いて快適性を高めている

なので、このクライスラーバッジとグリルを付けた、ランチアイプシロンも、ちまたでは、どうやらクライスラーの小型車としてすんなり受け入れられているようだ。場合によっては、PTクルーザーの後継がダウンサイジングでついに登場、なんて前向きに捉えられている節さえあって、まあ、それならそれでしょうがないか、と冒頭のアナウンサー氏を責める気も失せた。
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