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坐ることを拒否する椅子をつくった男(前(2ページ目)

石川尚のWPR#38:「私はグッド・デザイン式の椅子、あのお尻の雌型のような、いかにも坐ってちょうだいと媚態をつくっている不潔さがキライだ!」青山時代の岡本太郎展より。 取材協力:川崎市岡本太郎美術館

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

『こんなことなら俺が設計すればよかった!』


ここでは、岡本太郎さんが当時の建築、椅子やインテリアデザインのことに触れているのでご紹介しよう。


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・『デザインと人間---現代造形への批判』・・・岡本太郎

『(中略)
「今日の芸術」を主張する私として、過去の重っくるしい日用器具や室内デザイン、建築等、グロテスクな形式をあらゆる機会に罵倒し、攻撃しているのは当然なことだが、しかしここで白状すると、多くのいわゆる近代的な建築やデザインに大して本質的にやりきれない、一種の嫌悪感、そして軽蔑をも感じている。
例えば近頃のモダーンぶった椅子のデザインの不潔な気分はどうであろう。どいつもこいつも気どった格好でしなをつくり、「腰掛けてちょうだい」といわんばかり。
建築にしても、どうぞ住んでみてちょうだいと色眼をつかう類が多い。
(中略)
私はいずれにしても、なれあいは嫌いだ。人間が環境になれあうことも、また逆に環境がなれあうことも。―人間の文化はつねに激しく前にふみだしながら、次の瞬間、すぐになれあいの危機に直面して、すげての価値を失うのである。
私はむしろ反対のことを強調したい。やや奇抜なことを言うようだが、腰掛けられることを峻拒するような気配さえ感じとらせる、つっぱなした感じの椅子。また、ホーム・スィート・ホーム型の、図案やコンフォートだけを目的にした住み方を許さないようなていの家。つまり、いささか高度な精神の緊張を必要とするような、そうようものにこそとり囲まれ、びりびりと対決しながら生活したい。
(中略)
「先だって、しょっちゅう飲みに行くバーの親父から新しい店を作りたいが、という相談をうけた。とんでもない変わったものにしたらどうか、といろいろアイデアはさづけたのだが、さて出来上がって行ってみたら、まことに平凡、他にいくらでもあるのと別に変わりばえもない、拍子抜けがしてしまった。こんなことなら俺が設計すればよかった!
(中略)
門外漢のまったく勝手な空想を、あらゆる方面の技術家の徹底的な検討をへて、ぎりぎりに実現できる形に作り上げる。すばらしい人間的なモニュメントができるだろう。ル・コルビジュエが現代建築に驚異的な新生面を開いたのは、むしろ彼が建築家でなかったからだといえる。今日でも彼自身、まだ自分は画家が本業だと真剣に思い込んでいる、ということは確かに一つの暗示をふんでる。』

「建築文化」1956年4月号
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(引用:再録文献3, 図録/青山時代の岡本太郎1954-1970,p28-31)


媚びへつらい、妥協を嫌う太郎さん、常にステレオタイプな考えから一線を引いた純粋な視点がある。ちょうど今、東京ではル・コルビジェ(20世紀を代表するフランスの建築家、家具デザインでも名作の椅子を残している)展が開催されているが、太郎さんがパリに留学されている時にコルビジェと交友関係にあった・・・画家を目指していたコルビジェと岡本太郎さんの出会いは必然だったのであろう。

『坐ることを拒否する椅子を作った!』


会場で可愛い(失礼!)スツールを見つけた。陶器製のこのスツール、眼玉や口やらが上を見上げてにぎやかに叫んでいる。
これが岡本太郎さん傑作の椅子、『坐ることを拒否する椅子』だ。



太郎さんの代表作『坐ることを拒否する椅子』
写真をクリックすると画像が拡大されます。


建築家・家具デザイナー長大作さんも絶賛していた『坐ることを拒否する椅子』について、またまた「太郎さんの言葉」が効いている。
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