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坐ることを拒否する椅子をつくった男(前

石川尚のWPR#38:「私はグッド・デザイン式の椅子、あのお尻の雌型のような、いかにも坐ってちょうだいと媚態をつくっている不潔さがキライだ!」青山時代の岡本太郎展より。 取材協力:川崎市岡本太郎美術館

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

「TAROさんに乾杯!」


おもわずボクは、叫んでしまった。

画家:岡本太郎…………。
岡本太郎さんは前衛芸術家であることは百も承知していたが、1970年代の当時、ボクにとって、『芸術は爆発だぁ!』・・・と、やたらTVやマスコミで騒いでいる自己主張の強い『へんなおじさん』だった。

しかし、世田谷美術館で開催された『世田谷時代 1946-1954の岡本太郎』展
で、あらためて岡本太郎さんの生い立ち、時代環境、芸術家としての存在を知ると、太郎さんは近代芸術・建築・デザインの進展に多大な影響と功績を残され、芸術・デザインと私たちの暮らしの関係をより身近な存在にしたひとりなんだ。。。と再認識した。

そして今回、川崎市岡本太郎美術館に場所を移して、先の展覧会の後編とでもいうべき展覧会、『青山時代の岡本太郎 1954-1970 現代芸術研究所から太陽の塔まで』では、その思いは確信へと変わった。


緑豊かな森に佇む川崎市岡本太郎美術館
写真をクリックするとエントランス部分が拡大されます。



岡本太郎さんが存在していなければ、芸術、現代建築、インテリアデザイン等、デザインと私たちとの関係が密接なものとなるのにもっと多くの時間を費やしたかもしれない。
大げさではなく、ボクもデザインという仕事に就いてなかったかもしれないという思いさえした。
(今回の展覧会を観て)岡本太郎さんが自己信念をもって活動されてきたことは、日本のデザイン界にとって(もちろん、他の分野もであるが)意義のある、偉大でまさに伝説として語り続けなければならない価値がある。

とにかく、岡本太郎さんという芸術家の再発見・・・『TARO さんに乾杯!』なのである。

さて本来であるならば皆さんに展覧会の様子をご紹介すべきだが、今回のレポートは展覧会の図録を元に太郎さんが関わったデザインについてご紹介したい。


装丁がとても可愛らしい展覧会図録の表紙・・・岡本太郎さんのテキスタイルデザインを元にしている。素敵でしょう!
写真をクリックすると表紙全体が拡大されます。



とにかく、この図録が面白い!・・・というのも、太郎さんご自身が語り、執筆して掲載された様々な雑誌や書物からの抜粋文(図録では再録文献と表示している)が、面白いのである。
ボクは、太郎さんの言葉をウン、ウン、と何度もうなずきながら読んでいる。
まずはその一部からご紹介しよう。
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