住宅設計・間取り/住宅設計・間取りのテクニック

高齢になっても安心して住むために最初からすべきこと(3ページ目)

高齢化社会を迎え、高齢者の住まいは多様化していますが、それでもやはり、住みなれた我が家でずっと過ごしたいと願う人は多いはず。高齢になっても安心して住み続けるために、家を建てる時から注意しておきたいことを挙げます。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド


手すり下地を入れておく

階段など上下運動のある箇所には初めから手すりをつけておきましょう。

階段など上下運動のある箇所には初めから手すりをつけておきましょう。

廊下など水平移動する場所に手すりを設けておくと、高齢者が自力で歩く助けになります。しかし、若いころには水平移動のための手すりは不要なので、廊下の壁仕上げ材の裏側に、手すり取り付け用の補強下地材をあらかじめ組み込んでおきましょう。そうすることで、手すりの設置が容易になり、見栄えもそこないません。

また、玄関の上り框や階段、その他床に段差のある部分などには、縦手すりがあると事故防止につながります。これは高齢者だけでなく子どもや大人でも、上下の動きを介助する、または転倒・転落を防止するという意味で、役に立つ手すりになります。最初から取り付けておくことをお勧めします。

 

手すりの設置はマニュアル通りではなくその人にあった寸法で

手すりの取り付け位置は床から○センチ~○センチと一応マニュアルもありますが、実際に使う人が使いやすい位置に取り付けるのが理想的です。バリアフリー対応とは、けしてマニュアル通りでは満足できるものではないのです。

床段差は最初からなくす

高齢になると、歩行中に少しの床段差でもあればつまづきやすくなり、転倒の原因となります。また万が一、車イスの生活になった時も、段差はやはり極力ない方がよいのです。床段差を後からリフォームで解消するのはとても大変な作業となるため、建設当初からなるべく床段差は解消しておくことが望ましいと言えます。家の前の道路から自宅玄関まではどうしても段差が生じると思いますが、後々スロープを増設できるスペースを想定しておくとよいと思います。

 

車いすが走行するための有効幅員は?

廊下や出入り口の幅も、のちのち手すりをつけたり車イスで走行する可能性を考えると、最初から広めにしておいた方がよいでしょう。壁の位置を変更するリフォームは大がかりなリフォームとなってしまうからです。

参考に、一般的な木造住宅の廊下有効幅員は80センチ程度ですが、車イスで走行するために必要な最低幅は有効で85センチ程度です。「玄関から高齢者が主に使う居室まで」「高齢者の居室からトイレまで」など日常的によく使うと想定される廊下について、最初から取り入れておきましょう。

 

高齢になっても安心して住める造りは自立を支える

高齢になっても安心・安全に住める家であることは、自分のことは自分でするという高齢者の自立を支えることになります。歩けるうちは自分の足で歩いてもらうことで、その健康状態をなるべく長く維持することにつながります。バリアフリーの意味はそこにもあります。

 介護の問題などはありますが、それでも多くの方が、いくつになっても住みなれた自宅で余生を過ごしたいと願っていると思います。自宅で過ごしたいのに、住まいの構造に問題があってそれができず、仕方なく自宅を出ている方も多いでしょう。

家を建てる30代~40代の頃はまだ若くて自分の老後の姿などなかなか想像できないものですが、自宅を建てる時や購入する時に、高齢になっても住みやすい仕組みについて、今回ご紹介しような後から変更しにくい部分については、最初から取り入れておくことをお勧めします。

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