平成24年の賃貸住宅市場について
今年は、平成23年に起こった東日本大震災の影響を払拭する年であったと言えます。賃貸住宅市場では、震災直後に引っ越しを控えていた方たちが、震災の影響が落ち着くにつれ徐々に動き出しています。賃貸住宅の成約数は好調に推移しており、市場は回復傾向にあります。
平成23年の後半から持ち直し始めた流れが、24年も引き続き継続しており、総じて、賃貸住宅市場にとっては明るい兆しの見える年でした。
進む二極化の傾向
公表されている様々なデータを見る限り、賃貸住宅市場全体としては、概ね好調な一年でした。しかし、データをそのまま鵜呑みにして楽観的に捉えてしまうのは危険です。いくら市場が好調だとは言え、相変わらずの「借り手市場」であるということは変わりません。そして、傾向としては間違いなく二極化にシフトしています。
二極化の原因は、大きく分けて、駅からの距離や周辺環境などの立地的な要因と、間取りや設備、仕様、外観等の建物の要因が挙げられます。
まずは、建物の要因に着目してみます。今後の賃貸住宅市場では良質な賃貸住宅の供給が進んでいき、入居者のニーズを満たした建物が増えて行きます。ニーズに合った物件が増えれば増えるほど、ニーズにそぐわない物件は市場から取り残され、結果として、今後、二極化は一層進んで行くのです。
次に、地域的な要因に着目します。東日本大震災を機に、職住近接への意識が高まりを見せ、東京都心への地域ニーズが更に底堅くなってきています。反対に、同じ東京圏でも、オフィスゾーンから1時間以上かかるような場所については敬遠される傾向が出ており、立地によっても二極化は着実に進んでいます。
近い将来やってくる消費税の増税
消費税率は平成9年に3%から5%にアップしましたが、それでもなお、先進諸国から比べれば、まだまだ日本の消費税率は低いのが現状です。慢性的な日本の財政難を背景に、消費税のアップは避けられない状態が続いていました。それが、いよいよ具現化し始めたことで、我々としても増税に向けての覚悟が必要となります。更に、膨大な国債が発行されている現状を考えると、消費税の増税だけで財政難が解消されるとは考えられません。また、増税した分は原則として社会保障に回されるということを考慮すれば、今後、更なる増税も考えられます。そうなれば、入居者さんの可処分所得が減少し、当然家計を切り詰める方向に向かうでしょう。最近は、レジャー費や娯楽費は節約せず、必需的支出を切り詰める傾向があります。
必需的支出というのは、日常的な生活をしていくうえでの必需的な商品やサービスに対する支出のことで、家賃や食費、水道光熱費、通信費がこれに含まれます。
すなわち、増税は家賃の下落に繋がり得ることを、家主さんは認識しなければならないということです。