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「挑戦」の哲学をもつ木の椅子(後編)

UP#043:リートフェルトの生涯で最初の量産化椅子。極めてミニマムな木製の椅子、「ジグザグ・チェア」。前編に引き続き木の椅子の逸品をご紹介します。

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

『Zig Zag chair』
Gerrit Thomas Rietveld ( ヘリット・トーマス・リートフェルト)




1934年、オランダ人:ヘリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietveld)によってデザインされた美しい木の椅子:『Zig Zag chair』。筆者のプレス・レポート「日本初のリートフェルト展」でもご紹介の家具デザイナー・建築家の作品である。
前編に引き続き、今回も木の椅子でありながら「挑戦」というデザイン哲学をもつ椅子の魅力に迫まるとしよう。

チェリー材の赤みを帯びた木板が4枚、折り重ね連なる単純な構成が美しい。
椅子の構造は、金属パイプや樹脂成型なら理解できるが、かなりムチャというか木の椅子にしては挑戦的である。人が腰掛けると荷重(体重)で座下(脚)の部分がつぶれてしまうような不安定な構造を成り立たせるために、前後2カ所に楔(クサビ)を取り付けている……製作当初の1934年代の作品は、楔と座面+脚の端部にボルトを貫通し固定している。『なにが何でもと留めてやる!』いう作者の意地の端部(ディテール)である。
その後、ボルトのかわりに接着材とダボ(円柱形の木片を接合部分に埋め込む)を使用し固定している。
このダボの数が半端じゃない。実際に本物のZig Zag chairを解体した経緯があるので、この「部分」は別の機会にご紹介するが、痛々しいボルト金具は消え、しっかり固定するための仕掛け(想像以上のダボの数)はまったく見えない、いや意識的に見せない「哲学」をもったディテール」である。
スッキリと納まった端部で構成されたこの椅子は、まるで定規でひいた直線のごとく、文字通り「ジグザク」を描いている。


LEM

板厚21mm、連続する4枚の板がまるで・・・・・(写真をクリックすると拡大されます。)


他にも思わず唸ってしまうリートフェルトのディテールがある。


次ページでそのディテールをご紹介しよう。



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