スーパーカーシーンの“第三極”へ
貸し切りのプライベートサーキットで行われた試乗会。とはいえ、ちゃんとヘルメットを被って、隣にはプロドライバーのインストラクターも乗り、彼とインカムでやりとりをしながら、ハイスピードドライブを試していたのだが、面白いことに、サーキットランを楽しんでいる最中、これが“屋根開き”モデルの試乗テスト中であるということを、すっかり忘れてしまっている自分がいた。限界とは言わないまでも、それに近い領域で、12Cスパイダーがクーペと遜色のないパフォーマンスをみせてくれたからにほかならない。「あ、これ、スパイダーだったね」、とインストラクターに言うと、大笑いされてしまった。
とにかく、路面がグリップの利く氷のよう。アイススケートのフィギュアダンサーのように走るのだ。意のままに動く遊園地のコーヒーカップ&ソーサー、のようでもある。
クーペと変わらない、は本当だった。このあたり、マクラーレンが互角のライバルだと考えているフェラーリ458イタリア&スパイダーとは、ずいぶん考え方が違うようだ。458は、クーペに比べてわずかに低まったボディ剛性を隠そうとはせず、スパイダーのキャラをコンフォート方向に振ることで世間を納得させた。その一方で、ベルリネッタのそれは、よりスパルタンに向く方向にリテイストしている。
12Cとマクラーレンは、そうではない道を選んだ。クーペもスパイダーも、どちらを選んだとしても、街中では驚くほどに快適に過ごせて、サーキットでは破顔のドライバビリティを得ることができる。
どちらのメーカーの考え方がいい、という問題では、もはやない。これはもう、究極に好みの問題だ。ただし、スーパーカーがハードルーフという便利なシステムを手に入れた今、クーペとスパイダーのキャラクター分けにどれほどの意味があるのか、個人的にはちょっと首をひねらざるをえない。
マクラーレンは、フェラーリでも、ランボルギーニでもない、新たなスーパーカーシーンを創出しようとしている。流行りの“第三極”だ。果たしてそれが、成立するのか、どうか。マクラーレンという新しい自動車メーカーの未来は、そこにかかっている。