最初に感動したのはユーティリティの高さ
ところは、スペイン・マラガ郊外のプライベートサーキット。そのパドックに、シルバー、ブルー、ワインレッド、イエロー、ブラック、オレンジのマクラーレンMP4-12Cスパイダーが並んでいた。「どれでも、好きな色を選んで、外を試乗してきていいよ」。マクラーレンのイベント担当者がそう言って、ボクを手招いた。
「じゃ、赤いやつで。」 「グッチョイス! 」
迷わず赤ワインのようにシブい色合いの12Cスパイダーを選んだ。広報部長が自ら、ルーフの開閉方法や、クーペとの細かな違いをあらためてレクチャーしてくれる。彼が強調して曰く、「オープンシステム以外、性能も含めて、何らクーペと変わらないんだよ」。
「じゃあ、ボクはもうさんざんクーペに乗っているから、改めてスパイダーに乗る必要なんかないよね? 」。そう切り返してみれば、「ホントにそうだね! マラガへ、ようこそ。ホテルには素晴らしいプールもあるから、先に帰っててくれ」、と大笑いされた。さすが。こんな気の利いたやり取りができるのも、それだけプロダクトに自信のある証拠だろう。
それはともかく、広報部長氏の説明をマジメに聞いてみて、最初に感動したポイントはといえば、意外にもユーティリティだった。クーペ(ルーフクローズド)の状態で、跳ね上がった運転席側ドアの縁にあるボタンを押すと、トノカバーがパカッと開く。そこに52リッター、機内持ち込みサイズのゼロハリバートンがきっちり収まってなお、小物や上着を押し込めるだけの余裕あるスペースがみえたのだ。
もちろん、オープン時にはルーフがそこに畳み込まれる場所だから使えないわけだけれども、普段遣いの荷物アリ移動には、ちょうどいい。なにより、凹みや指紋を気にしながらフロントフードをいちいち押しはめるよりも、ずいぶん精神的にもラク。もちろん、そこには、144リッターという、そりゃもう十分なスペースがあるわけだけれども。
12Cといえば、デイリーからサーキットまで、それ1台でほとんど全ての領域(それこそ3人以上の人を運ぶこと以外)を万能にカバーする新世代スーパーカーである。そのオープンモデルに、クーペと同等のユーティリティを求めるのは当然といえば当然なわけだけれども、そんな当然の期待を超えていた。
クーぺとまったく同じ、重さ75kgのCFRP製モノコックシャーシー(カーボンモノセル)を採用。車両重量は1376kgとなる。複合素材を用いた2つのパネルを組み合わせたルーフ。リアガラスのみを開けセミオープンにもできる
ワインレッドのミドシップロードスターを毎日のパートナーとして使い倒す。東京と京都の往復から、試乗会やパーティ、成田や関空、スーパーカーミーティングにツーリング、そして、たまのサーキットラン……。
ふたたび妄想が、エスカレートしはじめた。