シングルクラッチのマナーの良さに驚き
それはさておき。パフォーマンスの方はどうか。パワーフィールは、パワースペックの同じガヤルドLP560-4とほぼ同等、わずかに劣る程度で、申し分なし。ノーマルモデルよりもサウンドがワイルドで、スパイダーゆえダイレクトに聞こえるぶん、“速い”と感じる要素が多い。それよりも、驚いたのが、シングルクラッチのマナーの良さだった。マイナーチェンジしたR8にはダブルクラッチミッションが積まれている。シングルクラッチはこれで最後、というわけだが、かなりの水準にまで達したなあ、というのが感想だ。
もちろん、ダブルクラッチシステムのように滑らかで早い変速はできないが、そのぶん、ダイレクトに段差の繋がりを意識できる気持のよさが、まずはひとつの魅力だ。そして、アップ時の変速ショックの方も、以前に比べると随分と“穏やか”になった。もちろん、ダウン時の痛快さは健在だ。
それでも、ダブルクラッチに換わった。ということは、やはり、その方が、燃費と走りの双方の性能アップに繋がるからだ(実際、MC後のV10プラスの加速性能はパワーでGTをうわまわっている)。アウディのスーパーカーであるという現実からみて、ポルシェはもちろん、フェラーリでさえ採用している手法を採り入れないことには、テクノロジー重視のブランドイメージにも傷がつく。
逆にいうと、シングルクラッチのダイレクト感を好むなら、この限定車が最後のチャンスだということ。個人的には、これくらい熟成が進んでくれば、ちょっとくらい“操りこなす”工夫があった方が、楽しいと思うのだが……。少数意見ではあるけれど。
19インチタイヤ、ハーダーサスに10mmローダウンのシャシーを与えられたが、前アシの食いつきの良さに感動しながらも、乗り心地がほとんど悪化していないことに驚かされた。要するに、性能アップしつつ、そのR8らしい日常性は担保した、ということ。マクラーレンMP4-12Cほど驚愕の乗り心地ではなかったけれども、それに近い印象をもった。3000万円級スーパーカーの世界で、“2番め”に、乗り心地のいいモデルであることは間違いない。
個人的には、このパフォーマンスのまま、で内外装を元に戻してくれたら、尚、よかったかなぁ、なんて。
着物は着物のまま、美しく……。