ものを減らせばゆったり暮らせる
収納スペースはあるのに部屋が片付かないのは、片付け下手が考えるすっきりわが家への道で説明したように、適材適所に収納が確保されていない、取り出しやすくしまいやすい収納になっていないなどといった理由が考えられます。しかし、ここでは、収納計画を見直す前に、考え方を根本的に変えてみることをおすすめします。その一つめは、ものを減らすということです。ものを減らせれば、当然のことながら収納スペースも減らせます。家を建てるとき、収納スペースが少なければ、クロゼットなどを造作する費用を減らせるだけでなく、その空間を他の用途に割くことができるのです。
例えば、家族団らんのためのリビングを広くしたり、キッチンや洗濯など家事スペースを広くして作業をしやすくできるほか、床面積を減らせるなら庭を確保することができるかもしれません。ものを厳選して、本当に必要な少ないものだけで暮らせば、家の中が片付くだけでなく、そのスペースや費用を別なことにいかすことができるのです。
「でも、愛着があって、なかなかものを捨てられないから困っている」という人もいるでしょう。そんな人に提案したいもう一つが収納スペースをコストで考えるという方法です。
収納スペースはいくらになる?
収納スペースをコストで考えればものを減らせるのでは?
では、前ページで説明した収納率から、収納スペースのコストを計算してみましょう。
前述の調査の「平均工事費3148万円・一戸建ての平均延床面積は131平米(39.63坪)」をもとに坪単価を計算してみると、下記のようになります。
3148万円÷39.63坪(131平米)=79.43万円
この収納スペースのコストを計算してみると、以下のようになります。
収納率12%の場合→ 79.43万円×4.76坪=378.09万円
収納率15%の場合→ 79.43万円×5.94坪=471.81万円
坪単価で言われると、収納にもかなりコストがかかっていることがわかりますね。しかも、実際の住宅内には、デッドスペースを利用した小さな収納や、キッチンキャビネットや吊り戸棚など、収納率の計算には含まれない収納スペースがかなり存在しています。さらに、本棚や整理ダンスなどの家具も収納率には含まれていません。ですから、注文住宅ならもちろんのこと、分譲一戸建てやマンションでも、家の中には400万円ほどの収納スペースがあることは間違いないのです。
まず、収納に対する考え方を変えよう
このように、収納スペースは実感しているより広い10畳という面積を占有していて、しかも、コストに換算すると約400万円という価値になります。例えば、家族全員が毎日のように利用する浴室は、1坪程度ですから、同じように坪単価を計算すると79.43万円です。収納スペースに比べると、あまりコストがかかっていないことになりますね。この状況から判断するなら、もはや、収納スペースが不足しているというより、ものを持ち過ぎていると考えるべきではないでしょうか。ものを持ち過ぎていると認識できれば、まず、ものを処分したり、厳選しようという気持ちになれるのではないかと思うのです。
ガイドと同じようにすっきりと暮らしたいけれど、片付かないと悩んでいる方こそ、ぜひ、収納についての考え方を変えてみてください。少なくとも、収納スペースは多ければいいというものでもないようです。この記事が、ものの所有についての考えを変えるきっかけになればと思います。