レース後半から追い上げを開始する「差し」
レースの前半は集団の真ん中~後方で体力を温存し、後半で徐々に追い上げていくスタイルを「差し」と呼びます。このスタイルを実践するには、何よりレースの後半だけで一気に他馬を追い抜ける加速力が必要。さらに、前に多数の馬がいてもひるまず突き進む精神力も大切になります。また、1ページ目で説明したように、周りに馬がいないと不安になる馬も「差し」を選択することが多いです。この戦法のリスクは、先ほど言ったように、自由に動けない可能性があること。もし勝負のポイントで他の馬に囲まれてしまえば、もう取り返しが付きませんし、また、最後の直線が短いコースでは、満足に加速できず終わるケースも多々あります。
2012年にフランスで行われた凱旋門賞で2着になったオルフェーヴルは、典型的な差し馬。前年の日本ダービーでは、オルフェーヴルが加速しようとしたところに前の馬がぶつかるアクシデントがあったのですが、それでもひるまず再加速して勝利。このような闘争心は、差し馬にとって非常に重要なものになります。
高リスクでも成功した時はド派手な「追い込み」
「差し」よりもさらに極端なスタイルが「追い込み」。追い込みはレース中、集団の一番後ろまで下がって力を温存し、最後の直線だけでライバル全頭をゴボウ抜きにしようという、何とも派手なスタイルです。当然、追い込みは差し以上にリスクがあるため、実績上位の馬でもコロッと負けてしまうケースがよくあります。この戦法を取るのは、最後にケタ外れの爆発力を発揮できる馬や、最初はなかなかやる気を出さないのんびり屋など。また、レース中に走るペースを細かく変えるのが苦手な馬も、追い込みを選択することが多いです。
2004年にデビューしたディープインパクトは、リスクの高い追い込み戦法でビッグレースを7勝もしたのですから、その能力は相当なもの。逃げ馬や先行馬が直線までに作ったリードを、ディープインパクトは最後方から一瞬で追い付き、さらに突き放してしまうのですから驚きです。あまりの実力差に、ライバルたちが落ち込まないか心配してしまうほどでした。
レースによって戦法を変える「自在」
競走馬の中には、今まで紹介したあらゆる脚質を使いこなす馬がごく稀にいます。このような馬の脚質は「自在」とされ、毎回レースに合わせて様々な戦法を見せてくれます。自在の脚質を持つのは、あまり集団におけるポジションにこだわらない馬や、総合力が高く、どんなレーススタイルにも対応できる馬が多いです。
1995~1997年に活躍したマヤノトップガンという馬は、まさに自在脚質の代表格。逃げの戦法でビッグレースを勝ったこともあれば、最後のレースでは直線で一気に追い込むスタイルで勝利を飾り、ファンを驚かせました。
大きく分けて、競走馬の脚質はこの5つですが、厳密にいえば、一頭一頭でその中身は細かく異なるもの。競走馬それぞれが持つ脚質に注目してみると、馬ごとの個性が分かり、競馬をより楽しく見られるはずです。
【関連サイト】
第143回天皇賞(春)歴代優勝馬ピックアップ「イングランディーレ」-JRA-VAN
JRA50周年記念サイト「シンボリルドルフ」
第78回東京優駿(日本ダービー) -JRAホームページ|データファイル
JRA競馬の殿堂「ディープインパクト」
JRA50周年記念サイト「マヤノトップガン」