謎を解くキーワードは吉永小百合?
ミステリーを隠し味にした難しい作りの映画ですが、『北のカナリアたち』の監督はベテランの阪本順治。絶妙のバランスで、ミステリーを含ませながら、はる先生と生徒たちの関係を描いていきます。真相を徐々に明らかにしながら、はる先生の美しく優しい魅力も加味していく演出力は確かです。そして、ラストに真実が明かされたとき、ちょっと「やられたわ~」という小さな驚きが。そう、この映画は吉永小百合がヒロインということで、ある思い込みを見る物にインプットしているのですよ。そこが巧いですね~。ああ、でもこれ以上は詳しく語れない……。
でも別に彼女が悪女というわけではなく、吉永小百合は決してイメージを壊すことなく、最後までやさしいはる先生です。そしてこの映画、生徒役はほかに宮崎あおい、満島ひかり、松田龍平、勝地涼、小池栄子、そうそうたる顔ぶれなのです。言ってみれば、日本映画界の若手オールスターキャストが出演しているのですが、その彼らが束になってもかなわない吉永小百合の輝き! やっぱり永遠のスター女優なのですね……と思いつつ、きっと阪本監督も撮影の木村大作氏も吉永小百合好きだったんだろうな……とも思いました。綺麗に撮っていましたからね。
ベテラン木村氏が撮影した北の大地の寒々しい空気感、謎を秘めた物語の展開、登場人物のキャラクター、特にはる先生の若干複雑なキャラクターは見ごたえありました。湊かなえ原作なので、ドロドロした展開を予想される方がいるかもしれませんが、原作者の個性さえも浄化してしまう清らかな小百合パワー。この映画は老若男女、年齢問わず見られる「ザ・日本映画」という匂いのする作品です。
『北のカナリアたち』
2012年11月3日(土・祝)公開
監督:阪本順治
出演:吉永小百合、柴田恭兵、仲村トオル、森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平、里見浩太朗、小笠原弘晃、渡辺真帆、相良飛鷹、飯田汐音、佐藤純美音、菊池銀河