キケンその1 : 「希望賃料」と「手取り賃料」は、まず一致しないと心得よ!
当たり前だが、家賃が入ってくるのは入居者がいるときだけ……。
さらに言えば、賃借人がきちんと家賃を支払って初めてオーナーは賃料を手にできます。滞納が頻発するようでは困るわけです。空室リスクを低減させる努力が不可欠となります。
そこで、一定の知識を有するオーナーは「サブリース」を活用して空室リスクを回避しようとしますが、ここでも注意が必要です。サブリースとは「転貸借」のことで、賃貸管理会社が介在して直接の借り主となり、その借り主(賃貸管理会社=転貸人)が入居者を募集して転借人(実際に住む人)を発見します。イメージとしては賃貸管理会社が該当住戸を借り上げ、オーナー(本来の貸し主)に代わって家主業務を代行するのがサブリースです。
仕組み上、管理会社が直接の賃借人となるため、空室リスクはゼロとなり、家賃収入の安定化が図れます。オーナーは転借人の有無に関係なく、毎月、一定家賃を手にできるようになります。サブリースが「家賃保証」と同語義として使われるのは、そのためです。オーナーにとっては、とても使い勝手のいい賃貸管理サービスです。
しかし、欠点もあります。サブリース利用時には賃貸管理会社に手数料を支払わなければならないため、手取り賃料はその分、減額を余儀なくされます。手数料率は少ないところで募集賃料の5%。多いところでは15%程度まで引かれます。たとえば募集賃料が10万円とすると、15%の手数料が差し引かれた場合、オーナーには8万5000円(10万円×85%)しか入金されません。手取り賃料として10万円を望むとなると、約11万7500円(手数料15%の場合)の募集賃料でないと成り立ちません。この手数料には消費税が課されますので、税率が8%へ引き上げられた際には増税分をさらに負担しなければなりません。
キケンその2 : 正当事由なくして、オーナー側からの契約解除は受け入れられない
次に、2番目のキケンとして、オーナーから賃貸借契約の解除を申し出る場合には、借地借家法上、「正当の事由」がないとその申し出は受け入れられません。たとえば、転勤が予定より早く解除され、わが家に契約期間中に戻りたいと考えても、自分の都合を一方的に押し付け、賃借人に「出て行ってくれ!」とは言えないのです。賃借人の生活がむやみに脅かされないよう、法律では賃借人の保護が図られているからです。そのため、賃貸人から(A)「契約更新の拒絶」あるいは(B)「中途解約の申し入れ」をするには正当の事由が必要となり、正当の事由があると認められる場合でなければ(A)(B)ともに出来ないと法律で規定されています。同法では厳格化が図られており、「賃借人に不利な特約を締結しても無効」とする強行規定まで盛り込まれています。つまり、自宅を一度、貸してしまうと、簡単に戻れないキケンがあるのです。正当の事由については、具体的に5つの判断基準が法律に記載されています。
<正当事由を判断するための5つの基準>
- 建物の使用を必要とする事情
- 建物の賃貸借に関する従前の経過 (賃料の設定額は適正か、賃借人の家賃の滞納はなかったか)
- 建物の利用状況 (賃借人はきれいに建物を使用しているか、旅行など長期間留守にしていることはないか)
- 建物の現況 (老朽度合いや危険性の有無など)
- 賃借人に対して財産上の給付をする旨の申し出をした場合における、その申し出 (立ち退き料の提示)
正当の事由をめぐっては訴訟に発展することも珍しくなく、それだけに中途解約を申し入れる可能性がある場合には、賃借人に不利にならない特約を契約書に盛り込み、事前説明して納得してもらった賃借人だけを契約対象に選ぶなどの工夫が必要です。戻る時期が明確であれば、定期借家契約を利用するのも一法でしょう。自らの再入居までを考慮した賃貸プランの策定が欠かせません。
次ページでは3番目のキケン、退去時の原状回復トラブルについて解説します。