マンション相場・トレンド/マンション相場・買い時

マンション買って損するケース、得するケース(2ページ目)

先行きが不透明な中、マンション購入を資産形成策として考えている人も多いようです。果たしてそのマンション購入は資産形成につながったのでしょうか。仮想のシミュレーションで考えてみましょう。

岡本 郁雄

執筆者:岡本 郁雄

マンショントレンド情報ガイド

 

将来売却することのリスク
3年後売却したAさんの収支はどうなった?

マンションを住宅ローンで購入することの大きな不安要素は、売却リスクです。転勤、転職、家族構成の変化で売却事由が発生する場合や経済状況の変化で返済が厳しくなるケースなどでマンションが問題なく売れるかどうかは、とても大切です。収入や勤務地が安定していれば売却の可能性も少なくなりその分マンション購入のリスクは低いといえます。
 
東雲のマンション群

東雲のマンション群。分譲当時とほとんど変わらない価格で流通する物件も

まず、売却できるためには、売却価格から売却の諸費用を引いた額が住宅ローンの残債を上回っていることが条件になります。資産価値に偏重しすぎるマンション選びに関しては否定的な意見を持つ私ですが、購入価格に占める頭金の割合が低いと、短期間で売却せざるを得なくなった場合、余裕資金が無いと売却できない可能性もあります。


では、1つのケースとして、中古マンション購入したのち3年で売却したケースを考えて見ましょう(目安として概算額を算出しています)。

Aさんは、都内の中古マンションを3年前に4,000万円で購入しました。自己資金は500万円ありましたが、余裕資金を持つため頭金5%(200万円)で3,800万円のローンを組みました。勤続年数の長いAさんは、都市銀行で金利1.2%で融資を受けることができました(期間30年間)。それまでの家は、60平米のマンションに家賃14万円で住んでいました。購入したマンションは、70平米で住み心地も良く月々の支払いも12万5,000円強でした。

関西方面への転勤が決まり悩んだ末売却することにしました。査定価格に近い売価でスタートしたこともあり、短期間で5%ダウンの3,800万円で売却できました。3年間の収支は果たしてどうだったのでしょうか?
(※管理費・修繕積立金の合計額は年間20万円、固定資産税・都市計画税の年額10万円とする。年間30万円の所得税・住民税の還付が受けられるとする)

■購入せずに、3年間賃貸に住み続けた場合の住居費
14万円×12ヶ月×3年+更新料14万円×2回=532万円・・・X

■購入した際にかかった費用(ローンシミュレーションを参考にガイドが試算)
仲介手数料 132万3,000円
契約印紙代 1万5,000円
ローン保証料 72万8,000円
ローン事務手数料等 6万2,000円
登記関連費用 20万2,000円
合計 233万円・・・A

■売却時にかかった費用(概算)
仲介手数料 126万円
契約印紙代 1万5,000円
登記関連費用 2万5,000円
合計 130万円・・・B

■3年間に支払った利息と経費
管理費・修繕積立金・固定資産税・都市計画税の3年間分 90万円
3年間払った借入利息 131万円(概算)
合計 221万円・・・C

■3年間還付された住宅ローン減税
30万円×3年分=90万円・・・D

■繰上げ返済することで戻ってくるローン保証料
62万円・・・E
※金融機関によっては、ローン保証料返還の際に手数料がかかるケースがあります。また、ローン保証料でなく融資手数料を融資契約の際にとられる場合、繰り上げ返済の際に返還金はありませんのでご注意ください。

3年間で実質的に支払った費用は
A+B+C-D-E=432万円・・・Y  となります。

このシミュレーションによると、
3年間の住居費X-Y購入売却による経費=100万円
価格が200万円下落しているので、実質的な損は100万円になります。

仮に、価格が下がらなければ約100万円のプラス、100万円のダウンなら損得がほとんど無かったことになります。

金利が低いことと、住宅ローン控除が使えることなど借入コストが今なら抑えられることで、上記のような結果になります。相応の家賃を払って暮らしている方で、低金利で住宅ローンが組めるなら短期間の売却でもリスクは抑えられるでしょう。上記のケースの場合、3年後の融資残高は約3,478万円です。売却時の経費を踏まえても購入時の10%ダウンの3,600万円程度で売却できれば資金の工面をせずに売却が可能です。逆に20%もの大幅なダウンになると、抵当権の抹消に資金が必要です。短期間に売却する場合、借入元本の返済額も大きくないのである程度資産価値が維持できないと売却できない可能性もあります。
 

いずれ買うなら時間を買う発想も必要
頭金を貯めるよりも家賃を払うのを早く止めるという考え方も

やっと出会えたと思えるマンションなら、多少相場より高く買ってもいいと私は思います。1年後、2年後に買うことを考えると現在の金利環境なら今購入して家賃の支払いを止めて、住宅ローンを払うほうが得だと思うからです。時間を買う発想も、マンション選びには必要だと思います。

自己資金不足を理由に購入に踏み出せない人も多いでしょう。そういった方には、今の家賃を踏まえてシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか? 確かに自己資金があるに越したことはありませんが、先送りにする分、家賃も払い続けます。高歩留まりの新築マンション販売現場が目立つのも、景気が悪いから家賃がもったいないと考えている人がいる証拠かも知れません。

 
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