クーペはドライビングファン徹底追及マシン
身体がすっかり新型M6クーペに馴染んだころ、サーキットに到着した。早速、そのままコースインする。馴染みのコース、まずは挨拶がわりにと、ストレートでフルスロットルを試してみた。もちろん走行モードセットはスポーツ+だ。M5で既に味わっていたとはいえ、ツインターボパワーは、さすがのひと言。Mのこだわりだろう、トルクのノリは決して過給を強調するようなものじゃない。あくまでもリニアにトルクが立ち上がって、その角度が急、といった風情だ。しかも、エンジンは七千回転以上まできっちりと回る。現在、マーケットで望みうる、最高の直噴マルチシリンダーのターボエンジンの一つだといっていい。
もっとも、かつてのV10エンジンのように、その回転フィールやパワーフィールの官能性にノックアウトされる、という事態には、残念ながら至らなかった。
限界域での味つけは、なかなかにワイルド志向だ。いとも簡単にリアはブレークの兆しをみせる。けれども、車体の剛性と確かなステアリング反応のおかげで、ドライバーはといえば、わりと冷静に対処することができた。それがシャシーポテンシャルの懐の深さということだろう。もちろん、電子制御もほどよく、嫌味にならない程度に手助けしてくれている。ときに、運転が上手くなった気分になれるのは、いかにも現代的な制御だろう。
注目のCCブレーキは、意外にも当たりが柔らかく、踏み込み量のコントロールもしやすかった。もちろん、制動力の方はといえば十ニ分。強力なストッピングパワーを誇っている。
総合的にみて、最強仕様のクーペは、Mらしく、ドライビングファン徹底追究型のマシンだと言っていい。