高所得のお年寄りの年金カットという、良い法案が頓挫
今回の国会に提出されていた年金改正案の中で「これは割といい!」と思える改正案であった、「高所得のお年寄りの年金カット法案」がごっそりカットされました。去る6月15日、民主・自民・公明3党で、消費税増税を通すための三党合意にもとづく修正協議が行われたからです。他の修正内容はここでは触れませんが、高所得のお年寄りの年金カットについては、丸ごと先送りとされました。与野党で法案成立に向けて修正協議をするのはよくあることですし、そのとき不要不急と考えられる改正を先送りすることもよくあることです。しかし、この法案を拙速とみなして先送りする必要はなかったのではないかと筆者は考えています。なぜなら、「そもそも収入があって年金がなくても困らない人」の年金をカットする法案だったからです。
高所得のお年寄りの年金をカットすべき明白な理由
一般に、年金を国がカットすることは望ましい行為ではありません。年金の受給権の不当なカットは財産権の侵害とも考えられるからです。しかし、高所得のお年寄りの年金をカットすることには合理的な理由があると考えられます。それは「老齢年金は、働けなくなったため所得が下がったお年寄りのために支給するもの」が本来の趣旨であるからです。年金は金融商品ではありません。私たちはつい、「払った保険料が戻ってくるか」ということばかり考えてしまいます。しかし本来の年金の目的は違います。所得が下がったときの老後の生活の支えであるはずです。逆にいえば、働けることにより給与が得られる、あるいは他の所得があって、十分以上の所得を得ている人については、年金を受け取る必要性がないわけです。しかも、現役世代の平均的な年収を上回っているお年寄り、たとえば「会長」とか「相談役」な肩書きがあって毎月100万円くらい収入がある人とか、駐車場経営やアパートオーナーであって毎月50万円も60万円も収入がある人が、国から年金をもらう必要があるでしょうか?
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